2015年9月16日 読売 社説「改正派遣法成立」「雇用安定の実効性は高まるか」

「正社員への道を広げる改正派遣法」

読売の社説に「改正派遣法成立」「雇用安定の実効性は高まるか」が書かれている。

「今国会の焦点の一つだった改正労働者派遣法が自民、公明両党などの賛成多数で成立した。30日に施行される。

派遣労働者の雇用安定と処遇改善に着実につなげることが大切だ。改正法は、企業が派遣労働者を受け入れられる期間の制限を事実上なくすことが柱である。

従来は、正社員の仕事を守るため、受け入れ期間を最長3年に制限してきた。秘書など26の専門業務は例外だったが、改正法では、この区分を廃止し、全業務で労働組合などの意見を聞けば、企業は期間を延ばせるようにした。

一方、個々の派遣労働者については、様々な仕事を経験して技能向上を図る観点から、同じ職場で働く期間を原則3年までとする新たな制限を設ける。

派遣会社に対しては、計画的な教育訓練など派遣労働者のキャリアアップ支援や、派遣先への直接雇用の依頼といった雇用安定措置を義務づけた。

働き方の多様化を踏まえ、手薄だった派遣労働者の保護を強化する改正案は、妥当な内容である。企業が派遣労働者を活用しやすくなる利点もある。

これまで長く働けた専門業務の人も、3年で職場を変わることになる。『雇い止め』の不安を抱く人は多い。政府は、派遣先や派遣会社の動向を注視し、雇用安定への努力を促すべきだ。

国会審議では、政府・与党が『正社員への道を開き、処遇改善を図るもの』と強調したのに対し、民主など野党は『一生派遣』が増える、と強く反発した。

改正法には、野党の主張を取り入れた39項目に上る付帯決議が参院で採択された。その結果、衆院厚生労働委員会で、採決前に委員長の入室を妨害するなど『実力行使』に出た野党も矛を収めた。

付帯決議は、派遣会社が得る「マージン」に関する規制や、派遣労働者の直接雇用に消極的な派遣先への指導などを求めている。検討すべき課題だ。

改正法では、一部で認めていた派遣会社の届け出制を廃止し、全てを許可制とした。教育訓練などを怠った業者に対し、許可取り消しも含めて厳しく指導監督する。厚生労働省にその能力があるかどうかが、改正法の実効性を確保するカギを握る。

許可制が有効に機能すれば、低コストのみが売り物の業者は淘汰されよう。良質な業者を育てることで、派遣労働をキャリアアップの機会として定着させたい」。

社説の結語である「許可制が有効に機能すれば、低コストのみが売り物の業者は淘汰されよう。良質な業者を育てることで、派遣労働をキャリアップの機会として定着させたい」は、正論である。今国会で成立した改正労働者派遣法の根幹は、悪質な派遣会社を排除するため、全て許可制としたことにある。派遣会社への規制を強化し、派遣労働者の雇用安定と処遇改善のために、である。事実、派遣会社には同じ職場での勤務が3年に達した労働者の雇用を受け入れ先の企業に要請(正社員化)するか、派遣会社自らが無期雇用するなどの雇用安定措置を義務づけている。野党が反対した「正社員への道が狭まる」「不安定な派遣労働を広げる」『生涯派遣で低賃金の人が増える」はウソとなるが。「安保法案は戦争法案だ、違憲だ」と同じである。

pagetop