2015年7月18日 産経「石平のChina Watch」「『株』に握られる習政権の命運」

産経に「石平のChina Watch」に、「『株』に握られる習政権の命運」が書かれている。

「今月3日までに上海株が約30%も暴落したという緊急事態を受け、中国政府はその翌日から、なりふり構わずの『株価防衛総力戦』を展開した。その結果、上海株は徐々に回復する方向へ転じたものの、この原稿を書いている14日時点では再び下落した。

今後の行方は依然、油断できない。注目すべきなのはむしろ、中国政府が展開した『株価防衛総力戦』のすさまじさである。

まずは4日、休日にもかかわらず、大手証券21社は緊急声明を発表し、共同で1200億元(約2・4兆円)以上を投じて株価を下支えすることを明らかにした。それほどの迅速さで歩調を合わせ集団行動に出たのは当然、政府当局の命令の結果であろう。

翌日の日曜日、中国証券監督管理委員会は新規株式公開を抑制する方針を発表する一方、中国人民銀行が証券市場に資金を大量に供給すると宣言した。そして、全国の国有大企業には6日の月曜日から株を買い支えするよう中央政府から指示が出された。

これほどの必死の巻き返しでもすぐには効果が出なかった。6日と7日に上海株は何とか持ちこたえたが、8日には再び約6%の急落に見舞われ、当局は力任せの強硬手段に訴えることにした。

9日、公安省は孟慶豊次官を証券監督当局に派遣し『悪意のある株式や株価指数先物の空売りを厳しく取り締まる』と発表した。普通の株式市場で空売りは合法的な市場行為であるが、中国政府は結局、警察力をもって市場行為を封じ込めるという前代未聞の暴挙に出た。

その前日の8日に『中国株』をめぐるもう一つの奇妙な動きがあった。ロシアのプーチン大統領が報道官を通して『中国株に絶対の信頼を置いている』とのコメントを発表したのである。一国の元首が他国の株価についてコメントするのはいかにも異様な光景だ。

実はその前日の7日、プーチン大統領は中国の習近平国家主席と会談したばかり。要するに、ロシアの大統領までが引っ張り出され中国の『株防衛戦』に助力させられたというわけである。

このように中国政府は政治、経済、公安、外交などの全ての力を総動員して必死になって上海株の暴落を食い止めようとした。そのことは逆に、北京の政府が株の暴落を何よりも恐れていることの証拠となった。

ただでさえ経済が沈滞して国民の不平不満が高まっている中で、株の暴落が引き起こしかねない騒動や暴動が大規模な社会的動乱に発展する恐れがあるからだ。そうなると共産党政権が命脈を保てないのは明白である。

だからこそ政権が『防備戦』と称し、株暴落の食い止めに躍起になっているのだ。そのことは逆に、政権の運命が気まぐれな株価の変動に左右されていることを意味している。株価の変動に翻弄され、株価の暴落が政権の崩壊につながりかねない現実こそが中国共産党政権のもろ過ぎる実体なのである。

習政権は今後も株式市場との果てしない戦いを継続していかざるを得ない。このような戦いでは、さすがの共産党政権も勝ち目はないだろう。株式市場は市場の論理に基づいて自律的に動くものだからいつでも政権の思惑通りになるとはかぎらないし、政権が株価の暴落を防ぐのに99回成功したとしても一度失敗しただけで大変なことになる。

鄧小平改革以来、共産党政権は『市場経済』を何とかうまく利用してきた。そして、経済の成長に成功し、政権を維持してきたが、今になって、政権は自らの作り出した市場経済によって首を絞められる事態になっている。『株』に握られる習近平政権の余命やいかに」。

「『株』に握られる習政権の命運」は、正鵠を突いている。市場経済を共産党は制御できす、逆に市場経済によって共産党が淘汰されるからである。中国の上海株暴落に対する共産党の株価防衛総力戦の結果は、明らかである。中国バブル経済の崩壊による第2の天安門事件である。

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