2015年7月3日 日経「迫真」「攻防・財政健全化2」「本気だろうか」
日経の「迫真」の「攻防・財政健全化2」に「本気だろうか」が書かれている。
「『本気だろうか』。22日の経済財政諮問会議。『潜在成長力は2%程度を上回るようにする』と首相の安倍晋三(60)が発言すると会議に居合わせた政府関係者は内心首をかしげた。
諮問会議の約1時間前に開いた産業競争力会議。高成長を裏書きするはずの成長戦略『日本再興戦略』に異論の声があがっていた。『生産性を上げる方向性や課題が明確になっていない』。民間議員を務める慶大教授、竹中平蔵(64)は同日配布された『総論』が踏み込み不足と指摘し再考を求めた。
農業の企業参入や労働市場改革で積極的なメッセージを。竹中ら民間議員は11日の前回会合でこんなふうに求めていた。だが再興戦略の総論は『第4次産業革命』などの派手な言葉が躍るだけ。『資料は今朝届いたんですが』。民間議員の意見を映さずに事を進めようとする内閣官房事務局に竹中は不満の色を隠さなかった。
成長戦略の位置づけが微妙に変わっている。安倍政権が初めて成長戦略作りに取り組んだ2013年6月。首相が講演で成長戦略の全容を説明すると内容の乏しさから日経平均株価は500円あまり下げ、政権は薬のネット販売解禁など成長戦略の拡充に動かざるを得なかった。
今回は成長戦略作りが停滞していると伝えられても日経平均株価は上昇基調を保ち2万円台を保った。『昨年秋に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株式運用の拡大を打ち出し株価の下支え役はできていた』。安倍の経済ブレーンはこう誇る。その分、成長戦略は失速気味になった。
格安の理髪店『QBハウス』を展開するキュービーネットは理容師と美容師が一緒に働けるような規制緩和を求め、規制改革会議もこれを後押しした。
だが、実際に解禁の方向が固まったのは、『すべての店員が両方の資格を保てば一緒に働ける店舗を認める』という内容だ。両資格を持つ人は全国でわずか1万人程度にとどまる。『QBハウスには(解禁される枠組みに従った)店は出せません』。18日の自民党厚生労働部会。規制緩和が実際にはほとんど使われることがないと明言する厚生労働省幹部の顔は妙にさばさばした表情だった。
日本経済の実力を示す潜在成長率は現在、1%に満たない。規制緩和や労働市場改革でこれを底上げすることが大幅な税収増を前提とする財政健全化計画の前提だが、その道筋は見通しにくい」。
竹中平蔵慶大教授が指摘した「生産性を上げる方向性や課題が明確になっていない」は、正鵠を突いている。22日の経済諮問会議で安倍晋三首相が「潜在成長力は2%程度を上回るようにする」に、異論を唱えたことが、である。農業の企業参入、労働市場改革が踏む込む不足だからである。民間議員の提案が、霞が関と自民党の抵抗勢力によって骨抜きとなったからである。改革の司令塔である経済財政諮問会議の劣化が原因である