2015年6月25日 朝日社説「戦後70年の慰霊の日」「辺野古やめ沖縄に未来を」

「辺野古進め沖縄に未来を」

朝日の社説に「戦後70年の慰霊の日」「辺野古やめ沖縄に未来を」が書かれている。

「沖縄はきのう、『慰霊の日』を迎えた。住民を巻き込み、20万人余が犠牲となった沖縄戦から70年。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐって、政府と沖縄県の対立が激しさを増すなかで迎えた慰霊の日である。

翁長雄志知事は追悼式での平和宣言で、政府に作業の中止を決断するよう求めた。沖縄にとって特別な日に発せられた知事の言葉を、日米両政府は重く受け止める必要がある。

<残る戦場の現実感>
移設に反対する市民は、昨年7月以来、辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前にテントを張って、24時間態勢で座り込みを続けている。

工事車両が出入りするたびに、地元や県内各地、さらに全国から集まった人々が抗議の声を上げる。

その中の一人、辺野古に住む島袋文子さん(86)は『基地がなければ、戦争は来ない。戦争は私たちでたくさん』と話す。

15歳で沖縄戦に巻き込まれた。壕に潜んでいる時、米兵の火災放射を浴びて左半身にやけどを負った。『私は死んだ人間がつかっている泥水を飲んで生き延びた。生きている限り、戦争と基地に反対する』

戦場のリアリティーが沖縄には強く残る。その感覚を、翁長知事は平和宣言で『私たち沖縄県民が、その目や耳、肌に戦のもたらす悲惨さを鮮明に記憶している』と言い表した。

市街地にあって『世界一危険』と言われる普天間飛行場を一刻も早く閉鎖するのは当然である。しかし、その移設先がなぜ、県内の辺野古でなくてはならないのか。

<捨て石の思い、再び>
菅官房長官や中谷防衛相は翁長知事と会談した際に、尖閣諸島周辺で中国公船の領海侵入が急増したことなどを例に、『わが国を取り巻く安全保障環境は極めて厳しい』『日米同盟の抑止力の維持、(普天間の)危険除去を考えると、辺野古移設は唯一の解決策』と繰り返した。

対中国抑止力の強化をめざす政府は、様々な局面で安全保障政策を転換させようとしている。安倍首相はいま、辺野古移設を進めることが日本の安全保障に米国を引きつける大事な要素だと考えているようだ。

集団的自衛権の行使を容認する昨年7月の閣議決定に続き、今春の『2プラス2』と『新ガイドライン』、日米首脳会談、そして安保関連法案の国会審議と、政府は自衛隊と米軍の『一体化』による日米同盟深化の道を進む。

法整備により『日本の抑止力は高まり、国民のリスクが下がる』と安倍首相は言う。だが、沖縄からは逆にしか見えない。

米軍とともに自衛隊が武力行使すれば、日本が直接攻撃を受けるリスクは増す。まして日本国内の米軍専用施設の74%を抱える沖縄は、他地域よりはるかに『戦争』に近づく。

沖縄にとっては再び最前線へと押しやられ、捨て石にされるとの思いが拭えない。県民が沖縄戦の記憶を呼び覚まし、辺野古移設を新基地建設だとして反発するのも当然なことである。外交努力による緊張緩和ではなく、中国脅威論を叫んで緊張を高めるやり方は、沖縄にとって最悪の選択だ。

<立ち止って考える>
翁長知事は先ごろ訪米し、米国務、国防両省担当者に辺野古の新基地建設反対を伝えた。反応は冷たいものだった。『辺野古移設が唯一の解決策』『日米合意は揺るぎない』と、日本政府と同様の言葉が返ってくるだけだった。

それでも、落胆する必要はなかろう。翁長知事の発言を聞けば、移設計画が簡単に進められないことに、米政府関係者も気付いたはずだ。

前米国務次官補のカート・キャンベル氏は朝日新聞の取材に、『どんな合意でも、沖縄県や県民の支持がなければならないと思う。このような反対意見が出ていることは、我々にとって立ち止まり、考えさせられる状況だ』と答えている。

日米両政府は再三、民主主義や自由、基本的人権、法の支配という『普遍的価値』を共有していると強調する。

沖縄では昨年、名護市長選、県知事選、衆院選と、いずれも辺野古移設反対を訴える候補が当選した。選挙結果をことごとく無視して作業を続けることは、普遍的価値に反しないのか。再考すべきだ。

平和宣言で翁長知事は『アジアの国々をつなぐ架け橋として活躍した先人たちの<万国津梁>の精神を胸に刻み、アジア・太平洋地域の発展と平和の実現に努力する』と述べた。

日米両政府、そして国民を挙げて、この沖縄の未来に協力しなければならない。本土防衛の捨て石にされ、非業の死を遂げた多くの沖縄戦の犠牲者を忘れることなく」。

社説の主旨である「辺野古止め沖縄に未来を」に異論がある。「辺野古進め沖縄に未来を」が、正論だからである。そもそも「辺野古移設」とは、米海兵隊の新基地建設なのであり、日米同盟の対中国抑止力維持の核心である。辺野古移設によって、中国の脅威から日本、沖縄を守るために、である。

問題は、中国共産党主導の「平和という名の戦争」が、沖縄で先行していることである。「辺野古移設は沖縄を再び戦場にすることだ」とのデマ宣伝が、である。昨年の名護市長選、県知事選、衆院選で自民党は全敗、共産党中心の野党が圧勝したのが、その証左である。沖縄県民の民意が、「辺野古止め沖縄に未来を」との朝日の論理に同調しているからである。「辺野古進め沖縄に未来を」の正論を県民の民意にするためには、自公支持層の思想武装が急務となる。

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