2015年4月26日 朝日「川内再稼働差し止め却下」
朝日に「川内再稼働差し止め却下」が書かれている。
再稼働の前提となる新規制基準に主要部分が適合したと原子力規制委員会が認めた二つの原発の運転をめぐり、司法判断が分かれた。九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働をめぐり、鹿児島地裁(前田都勝裁判長)は22日、運転差し止めを求めた住民の仮処分の申し立てを却下した。
<求める安全、高浜と差>
これに先立ち福井地裁が14日に関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を禁じる仮処分を出している。
川内の仮処分は同原発の運転差し止めを求める民事訴訟の原告住民のうち23人(辞退により現在は12人)が申請していた。住民側は福岡高裁宮崎支部に即時抗告する方針だ。
前田裁判長は、新規制基準について『最新の科学的知見などに照らし、不合理な点は認められない』と指摘。川内原発で想定される最大の揺れ『基準地震動』の妥当性も、規制委の判断に問題はないとした。広範囲に壊滅的被害をもたらす火山の『破局的噴火』については、『火山学者から危険性が高まっているという具体的な指摘はない』として、九電側の訴えを認めた。
新基準や、耐震設計の基礎となる基準地震動の妥当性は、高浜と川内の仮処分申請で共通する争点だった。判断が分かれたのは、両地裁が求めた原発の安全性のレベルが異なっていたためだ。
福井地裁は福島第一原発事故を踏まえ、深刻な事故が万が一にも起きない厳格さを要求。新基準を『緩やかに過ぎ、合理性を欠く』と指摘した。一方、鹿児島地裁は新基準が放射性物質が放出されるような事故が起こることを前提にしていることを踏まえつつ、基準を満たせば重大事故が起きる危険を『社会通念上無視できる程度に小さくできる』と判断した。
明治大の勝田忠広准教授(原子力政策)は『科学に不明瞭な部分がある。不完全な科学なら、<国民の命を守れ>というのが福井地裁の判断』と分析する。一方、原発訴訟の経験がある元裁判官の海保寛さんは、専門家の意見を尊重して合理性を判断した今回の決定は、伊方原発訴訟での最高裁判決(1992年)の手法を踏襲したと指摘する。海保さんはまた、今後の同種の仮処分や訴訟では、裁判官が福島原発事故をどうとらえるかでも判断が分かれるとみている。
<揺れ想定、問われた「余裕」>
予測はどこまで信頼でき、想定の上乗せや設計上の『余裕』でどこまでカバーできるのか。基準地震動はこの点が焦点になった。
地震の揺れを想定する基本的な方法は、東日本大震災前と変わらない。原発ごとに周辺の活断層や地下構造を調べ、直下での揺れを計算する。高浜の決定は、過去10年で想定を超す揺れが4原発で5例あったことなどから『信頼性を失っている』と判断した。
これに対し、川内の決定は、新基準では過去に超えた原因を踏まえていることや、自然現象の『不確かさ』も上乗せしていることを重視。『一定の余裕が確保されている』とした。
川内原発の想定は620ガル。原発に最も影響が大きくなるような条件を組み合わせ、以前の540ガルから引き上げられた。実際に施設や機器が壊れ始めるまでには、さらに『余裕』がある。その上限は1号機で1004ガルとされる。
高浜の決定は、過去の地震の『平均像』をもとにした計算方法そのものに疑問を投げかけ、余裕の上限も超える可能性があるとしていた。川内の決定は、平均像をもとに地域の特徴を考慮し、不確かさも見積もる新基準の考え方に理解を示した。
基準地震動の考え方が否定されれば、全国一律に過去最大級の揺れを想定せざるを得なくなり、影響は大きい。東京大地震研究所の纐纈一起教授は新基準の地震想定の方法について『最新の科学に照らせば合理的ではある』としながらも『福島の事故を経て最新の科学にも限界があることが明らかになった。決定は科学の限界をもう少し考慮してもよかったのでは』と話す」。
22日、鹿児島地裁は、川内原発再稼働差し止めの仮処分を求めた住民の申し立てを却下した。14日の福井地裁の判断と真逆である。判断が分かれたのは、1992年の伊方原発訴訟での最高裁判決である「科学的知見を尊重して、合理性を判断する」を踏襲したか否かである。福井地裁の判断が異例なのである。