2022年12月4日 暗号資産大手FTX ずさんな経営

仮想通貨のネーミングで浸透し金融投資対象となった暗号資産の大手FTXトレーデイングが破綻した。業界自体にも信頼性に懸念が出ている。2019年に設立されたFTXだがわずかな期間で暗号資産交換業界大手に成長した。しかし関連会社の財務状態に疑問が生じ、報道がきっかけとなり取り付け騒ぎとなった。その後すぐに米連邦破産法11条適用の申請がされた。

FTXの実態は、銀行口座残高の詳細が把握されてないなどのケースもあり、ずさんな経営実態が明るみになってきた。前CEOのサム・バンクマン・フリード氏が運営の別法人投資会社にFTX本体の顧客資産約100億ドルを貸し付けていた疑念も生じている。財務諸表の正誤性にも疑問がある。

30歳の若き経営者として業界をリードしてきたバンクマン・フリード氏の経歴はマサチューセッツ工科大学で物理学専攻、金融会社でトレーダーとして勤務、当時の暗号資産ビットコインに注目し米国とアジアの価格差にヒントを得て、米国で買い、日本で売る、を繰り返し莫大な利益を得たとされている。

FTX設立後は日本でもおなじみのメジャーリーガ—大谷翔平選手やテニス界の大阪なおみ選手などを積極的に広告に起用して当法人もメジャーになってきた。全世界では約1割のシェアを誇るという。またバンクマン・フリード氏は沢山稼いだお金を慈善活動に使う哲学、EA宣言(効果的利他主義)を掲げて人々の共感を得ていた。貧困問題や気候変動に取り組む団体に寄付もしていたようだ。政治に対しても大統領選当時のバイデン氏に520万ドルの寄付が報じられている。

輝かしい経歴や行動に魅了され成長してきたFTXだが破綻申請後、負債は日本円換算で数兆円とみられている。日本で展開するFTXジャパンも同じく破産法の対象となる。日本の金融当局は混乱を避ける為、日本は分別保管義務があり、「資産国内保有命令」を出して冷静さを保とうとしている。今回の件は暗号資産全体に与えた不安要因は計り知れない。そもそも国家や軍事力が背景に無いものは通貨となり得ない事を見せつけられた感がある。ブロックチェーンシステムは多様性がある便利なシステムであるが、投資対象として暗号資産に多大な期待を寄せるのは注意が必要に思う。

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