2022年11月4日 アメリカンドリーム再来か
久しぶりのアメリカンドリームを連想させる演説が9月17日鉄鋼の街オハイオ州のタウン集会で鳴り響いた。共和党候補のバンス氏と共に演壇に上がったトランプ前大統領だ。中国との経済争いを強調し、バイデン政権は雇用喪失を招いていると批判した。バンス氏も民主党候補のライアン氏に対してワシントンDCの既得権にどっぷりつかった「DCティム」と批判した。
このエリアは長らく鉄鋼業で栄えた地域であるが、今は廃墟化している。中国との競争にさらされた結果と地域労働者も思っている。その思いを原動力に民主党支持だった労働組合票をひっくり返したのがトランプ氏の強さの源泉であろう。現職を退いた今も構造的には変っていないとみられている。
11月8日中間選挙投票日の激戦州と言われる所以だが、まさにアメリカを支えた中間層、労働者の支持が鍵を握る。ラストベルトとよばれるこの地域は、雇用や賃金の安定した労働組合が組織され民主党を支えてきたが、グローバル化の波で製造業の空洞化が進んだ。特にリーマンショック後の2009年までに50万人ほどの雇用を失った。
その反面、世界貿易機関(WTO)に加盟した中国はグローバル化の経済的勝者となった。アメリカからみれば覇権主義国家の状態で、経済にとどまらず、軍事的にもアメリカを脅かす存在になり、世界の覇権をめざしているとみえる。そこに労働者階級の心の琴線に触れる分かりやいロジックで登場したのがトランプ氏である。
一方民主党側もラストベルト地域に対して無策で傍観いるだけではなく、バイデン政権もオハイオ州コロンバス郊外にIT大手のインテル工場予定地を視察し、半導体の国内生産及び研究に補助金を出すなど、中国に対抗意識したインフラ投資を推進する立法成立をアピールしている。実際にローズタウンのGM工場跡地には台湾の精密工業会社(フォックスコン)がEVの生産を開始している。しかし、底堅いトランプ支持を撥ね退ける程の拡がりはないようである。アメリカは同盟国日本にとって影響大であり、せめて今後の動向に注目していく事しか出来ない。