2019年1月23日 朝日「時時刻刻」「統計不正 重い政治責任」

朝日の「時時刻刻」に「統計不正 重い政治責任」が書かれている。

「厚生労働省の『毎月勤労統計』をめぐる問題は、菅義偉官房長官が『統計法違反』を認める事態に発展した。ルールに定めた調査対象を無断で絞り込む不正は15年前に始まり、安倍政権では大臣名で虚偽の説明書類を提出したり、不適切な調査部分のデータ補正を始めたりしていた。その監督責任と政治責任も問われる。

≪歴代厚労相「報告ない」≫

勤労統計は従業員500人以上の事業所をすべて調べるルール。厚労省は不正な抽出調査を続けながら、統計法を所管する総務省に対し、16年10月27日付で全調査を継続するという虚偽の内容を記した大臣名の書類を提出した。書類に個人名の記載はないが、当時の厚労相は自民党の塩崎恭久衆院議員だった。

塩崎氏は16日、朝日新聞の取材に対し『一切(報告は)上がってこなかった。(担当職員に申請の)権限を下ろしていた』とし、自身の関与を否定。監督責任については『トップにあった者として深くおわび申し上げる。原因究明と再発防止を徹底し、全力で信頼回復に努めてほしい』と述べた。

14年9月~17年8月に厚労相を務めた塩崎氏は、早朝から夜まで職員からの報告を細かく受けると省内でも評判だったが、統計不正問題は把握していなかったという。『知らなかったから許されていいと言っているわけではないが、事務的なことまで全部大臣が見ることをみんなは期待しているのか』とも語った。

≪数値 疑問の声あったのに≫

厚労省は昨年1月の調査分から、本来の調査対象数に近づけるデータ補正を無断で行った。システム変更も必要だったが、公表せず、不正な調査をデータ補正により組織的に隠蔽した疑いがある。

当時の厚労相は、安倍晋三首相側近の加藤勝信・自民党総務会長。16日、東京都内での講演の最後で『少々厚労相をしていた点からも甚だ遺憾でもあり、当時管理していた立場からも深くおわびを申し上げなければならない』と自ら切り出し、謝罪した。しかし、データ補正については『当時、報告を受けていたわけではない』と自身の関与を否定。自らの責任については『二度とこういうことが起こらないようにしていくことが私の責任』と述べるにとどめた。

勤労統計をめぐっては、一部のエコノミストから数値の信用性を疑問視する声があった。加藤氏が在任中の18年9月には、総務省の統計委員会でも、同年6月の現金給与総額が前年同期比3・3%増と21年5か月ぶりとなる異例の高い伸び率となったことを念頭に議論があり、調査方法を点検する機会になり得たはずだった。さらに厚労省内では抽出調査の拡大も計画されていた。厚労省職員から『統計に詳しくて苦労した。計算式の意味を聞いてく』」と言われるほどの加藤氏だったが、結果的には、見過ごしたことになる。

≪現政権、解明及び腰、「政権交代の前後を通じ・・」≫

抽出調査をする不正が始まったのは、2004年1月の小泉政権でのことだ。当時の厚労相は公明党出身の坂口力・元衆院議員。朝日新聞の取材に『当時、私は何も聞いていなかった』と述べた。

不正はそれから15年間にわたって続いた。この間、民主党政権の3年間を挟んでいる。民主党政権時代に厚労相を務めた立憲民主党の長妻昭代表代行も『大臣時代に全数調査を抽出に変えてやっているなんていう報告はなかった』と話す。

長期間にわたる不正が明らかになったことで、政権幹部に広がるのは『やれ、どっちの責任だという声も出るが、政権交代の前後を通じて長く行われてきた』       (山口那津男・公明党代表)と強調する姿勢だ。菅氏は16日の記者会見でも、塩崎氏らから事情を聴く考えはないと明言。『まず、事務的に調べたい』と述べるにとどめた。ある官邸幹部は『いい迷惑だ』とさえ語る。

しかし、厚労相名での虚偽申請や不適切な調査部分のデータ補正は安倍政権でのことで、根本匠厚労相は昨年12月20日に事務方から報告を受けながら、同省は不正な調査方法を伏せたまま10月分の確報値を発表した。政府全体で56ある基幹統計の点検結果は25日に公表を予定する。今後開かれる国会審議では、こうした課題も含め、現政権の対応が問われるのは必至だ。

≪抽出に変更3府県に伝えず、厚労省は「連絡」≫

「毎月勤労統計」の東京都分が不正に抽出調査されていた問題で、厚生労働省が神奈川、愛知、大阪の3府県でも同様の手法に切り替えようとした際に、3府県に手法の変更を伝えていなかったことがわかった。厚労省の説明と矛盾しており、調査の実務を担う自治体に伏せたまま変えようとした疑いがある。厚労省は11日に公表した検証結果で、東京都と同じ抽出調査を19年から3府県でも始める準備を進めていたとし、昨年6月に3府県に『抽出調査を行う予定である旨の連絡をした』と説明していた。だが、3府県の担当者によると、昨年6月に調査対象の事業所の入れ替えについての通知文書と、新しい調査対象の事業所リストなどが届いたが、これらの書類に『抽出調査に切り替える』との説明はなかった。

愛知県の担当者は『事務を進める中で対象が抽出されていることに気づき、ルールが変更されるのだと認識した』と話す。東京分の問題が発覚し、厚労省は3府県で抽出調査を始める方針を昨年12月に撤回した。

3府県側と説明が違うことについて、厚労省は『詳細は精査中で答えられない』とする。

また、厚労省が作成したこの統計の『事務取扱要領』にあった抽出調査を容認する記述が、17年の要領から消えていたことが分かった。不正を隠蔽しようとした疑いもある」。

「統計不正 重い政治責任」と言うが、歴代厚労省への「報告ない」ことから、厚生省官僚の不作為の罪となる。統計法違反の罪となり、歴代厚労相はその監督責任は問われるが、現政権の責任追及は無理筋となる、

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