2016年11月24日 日経 社説「自由貿易堅持へTPPを諦めるな」
「日米同盟基軸とTPP承認は車の両輪」
日経の社説に「自由貿易堅持へTPPを諦めるな」が書かれている。
「トランプ次期米大統領が環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を唱えるなか、TPPの先行きが見通せなくなっている。
しかし、アジア太平洋地域全体の自由貿易圏をつくるうえで、TPPはもっとも重要な礎となる。日本を含む参加国はTPPの発効をあきらめることなく、国内手続きを着実に進める必要がある。
ペルーで開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にあわせて、日米を含むTPP参加12カ国は首脳会合を開いた。安倍晋三首相が『発効に向けた努力をやめるとTPPは死に、保護主義がまん延する』と訴えたのは当然である。一部の国からは、会合に先立ち『米国を外し、新たな環太平洋での協定を構築すべきだ』との意見が出ていた。
仮に最大の経済大国である米国がTPPから抜ければ、貿易・投資の自由化により域内経済を成長させる効果は限られる。世界的に自由貿易が退潮し、世界経済の行方にも影を落としかねない。
米国を含む12カ国がひとまずTPP存続へ協調する方針を確認したのは評価できる。課題は米国以外の11カ国の結束を保つことだ。
トランプ氏が大統領選の期間中、TPPに反対する発言を繰り返してきたのは事実である。だからといってTPPを安易に捨て去ってはならない。
日本など各国は、高水準の貿易・投資ルールを通じて実現しようとしているTPPの意義をトランプ氏に粘り強く説明していく必要がある。米国の外交戦略にとって重要である点も訴えてほしい。
日本は参院で審議中のTPP承認案・関連法案を確実に成立させるべきだ。すでに議会承認を終えたニュージーランドに続き、早期発効の機運を高めてほしい。
同時に、他の通商交渉も加速しなければならない。欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉に向け、日本が主要閣僚会議を設けたのは前進だ。政治主導で年内の大筋合意を導いてほしい。
中国やインドなどが参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉でも、日本が積極的な役割を果たせば、米国にTPP参加を強く迫ることができる。
APEC首脳会議は『あらゆる形の保護主義に対抗する』との宣言を採択し閉幕した。 日本はこうした国際的な取り組みの先頭に立ち、世界の自由貿易を牽引しなければならない」。
社説の主旨である「自由貿易堅持へTPPをあきらめるな」は正論である。
トランプ次期大統領が21日、動画メツセージで来年1月20日の就任初日にTPP離脱を議会や協定参加国に通告すると宣言したからであり、TPPの発効は絶望的な状況となった。17日の安倍・トランプ会談での日米同盟基軸確認と矛盾するが。米国のTPP離脱を契機に中国が国際貿易の主導権を握る好機としてアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)への取り込みをTPP参加国に画策するからである。日米を外してのTPP解体が狙いである。
問題は、TPPが日米同盟基軸と両論の対中国包囲網としての自由貿易協定との戦略的意義を有していることである。TPPからの米国離脱は、戦略的にあり得ないことなのである。中国の覇権主義を容認すると同義となるからである。安倍晋三首相は日米同盟基軸を確認したトランプ次期大統領は必ずTPP承認に翻意するとの信念をもって、自由貿易堅持へTPPを諦めてはならないのである。