2014年10月6日 朝日「時時刻刻」「米、世論受けデモ支持」「香港民主派抗議」

朝日の「時時刻刻」に「米、世論受けデモ支持」「香港民主派抗議」が書かれている。

「香港の民主派による抗議運動が米中間の外交課題に発展してきた。米国内の世論を背景にオバマ政権が中国を強くけん制する一方、中国側は『内政干渉だ』と反発して一歩も引かない。ただ各国首脳を招いて11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)などを控える中国政府は、抗議運動への難しい対応を迫られている。

<集会、世界各地に飛び火>

王毅外相がワシントンを訪問したのは、11月に北京で開く米中首脳会談の成功に向けた調整が大きな目的だった。ところが9月末、数万人の学生らが香港中心部の幹線道路を埋め尽くす事態となり、訪問の色彩はがらりと変わった。

王氏とライス大統領補佐官との会談に、オバマ氏が突然同席。王氏に直接、『香港市民の志を支持する』と伝えた。また、ケリ―国務長官は王氏との会談前、香港の問題を話し合うのは『疑いがない』と強調。香港当局が抑制し、デモ参加者の権利を尊重するよう求めた。こうした展開に、王氏は終始、厳しい表情を崩さなかった。

米政府の首脳が相次いで市民を支持した背景には、デモに参加する香港の学生らに同情的な世論の高まりがある。学生らが求めているのは、『民主主義』『表現の自由』『普通選挙』といった、欧米社会では根幹の価値観。これらが中国政府によって否定されていると、とらえられている。

米主要紙も連日、大きく報じている。ニューヨーク・タイムズ紙は1日、『リーダー不在だが、秩序だった抗議活動』と題した特集を1面に掲載。CNNテレビは、警察隊の催涙ガスが学生を覆う映像を繰り返し放映。民主化を求めた学生が軍に鎮圧された1989年の天安門事件の映像と比較した。

香港の抗議デモを支持する市民集会は、米ロサンゼルスやシンガポール、フィリピンなど世界各地に広がっている。97年の中国返還まで香港を統治していた英国では今年、84年に英中が香港の返還と、返還後50年間は高度な自治を認める『一国二制』とすることを決めた共同宣言に調印して30年の節目。キャメロン英首相は9月30日、『事態を深く懸念しており、解決を望む』と発言。クレッグ副首相は同日、普通選挙実施を否定した中国政府の対応に『失望と不安』を表明するため、劉暁明駐英中国大使に緊急会談を申し入れた。

<中国は硬化、収拾見えず>

『香港とマカオの同胞は、祖国の大家族の中で、より明るい未来をつくり出せるはずだ』。習近平国家主席は先月30日、国慶節(建国記念日)を祝う演説で、中国と香港政府の下での団結を香港市民に訴えた。急進的な民主派勢力の呼びかけに市民が応じて混乱が広がり、米英などの介入を招く――。香港の現状は中国が最も懸念していたシナリオに近づいている。

中国政府は今回のデモを『ごく少数の者の扇動による不法な集会』として厳しい態度で対応する構えだ。中国共産党機関紙の人民日報は1日の論評で『意図を持って法治に対抗し、騒ぎを起こした者たちは、その結果に責任を負わねばならない』と主張。人権団体『アムネスティ・インターナショナル』によると中国のネットでデモを支持したユーザ-が少なくとも20人拘束された。

中国は党指導部の意向を踏まえて決定した改革方針を改めるつもりはない。全国人民代表大会(全人代)常務委の李飛副秘書長は8月の会見で、香港民主派が改革方針を受け入れなければ、『もう香港にチャンスは回ってこないだろう』と明言。廃案にして、業界団体代表ら選挙委員(1200人)しか投票権を持たない現状の選挙制度のままとし、その責任を民主派にかぶせる構えだ。

人民日報傘下のサイト『人民網』は『一部の民主派人士は事前に米英を訪れて海外反中勢力に支持を求めている』と警告。英国には『(香港を植民地にしていた)150年間に、香港同胞に1日たりとも実のある民主を与えてこなかったではないか』と批判した。

米英の指導者が民主派への『支持』を鮮明にしたことは、香港の民主化問題が外交的、イデオロギー的な対立に発展することを意味し、中国は一層態度をこわばらせる可能性がる。

しかし、中国にも事態収拾の道筋が見えているわけではない。中国の軍や武装警察の出動といった状況になれば、『天安門事件の再来』として香港社会と国際世論の厳しい批判を受けるのは必至。11月の北京APECを前に各国との関係悪化は避けたいのが本音だ。

中国は『香港政府には法に基づき事態を処理する完全な能力がある』(王毅外相)としてデモ隊の強制排除などの強硬措置は表向き、香港当局に委ねる構え。一方、香港の議員や財界などを通した水面下の世論工作に力を入れるものとみられる」。

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