2018年10月7日 産経「美しき勁き国へ」櫻井よし子氏「偏った情報発信の罠」

産経の「美しき勁き国へ」に櫻井よし子氏が「偏った情報発信の罠」を書いている。

「わが国のメディアは物事の全体像をおさえて、バランスのとれた判断材料を提供し得ているか。偏った情報発信の罠に陥っていないか。自民党総裁選の報道を振りかえると疑問を抱かざるを得ない。

日本のメディアは、金日成の主体思想に共鳴する親北朝鮮勢力に席巻された感のある韓国メディアに似てきたのではないかと、心配している。

韓国は新聞もテレビも、一部を除いて親北勢力に事実上乗っとられており、バランスのとれた情報発信が難しい状況に陥っている。

このような思いは候補者の安倍晋三首相(党総裁)と石破茂元幹事長を招いた各局の報道番組を見てより切実になった。私が視聴したのは、『日曜討論』(NHK、9月16日)、『news every.』(日本テレビ、9月17日、以下「エブリィ」)、「報道ステーション」(テレビ朝日、9月17日)、『NEWS 23』(TBS、9月17日)、『プライムニュースイブニング』(フジテレビ、9月17日)の5番組である。

玉石混交で、番組はNHK型、フジテレビ型、その他民法型に3分類できた。無論これは今回の自民党総裁選関連の報道に限った分類である。

一番まともなのがフジテレビだった。アベノミクスからロシア外交、北朝鮮問題、憲法改正まで安倍、石破両氏の議論の焦点が拡散しないように、またかみ合うように、キャスターの反町理氏が巧みな質問をし続けた。NHKは内政外交全般にわたって幅広く聞くべき課題を淡々とこなした。

残り3番組は控えめに言っても思い込みと情報の偏りの罠にはまっていた。3番組の共通項は①国際情勢についての質問がない②モリ・カケ問題に多くの時間を割き、もっぱら安倍氏の政治姿勢を論難した③加計学園問題で石破氏の果たした後ろ向きの役割には全く触れない――である。

トランプ、プーチン、習近平各氏に加えて朝鮮半島には金正恩、文在寅の両氏。こうした周辺諸国首脳の顔ぶれを頭に浮かべるだけで、外交・安全保障政策が日本の命運をどれほど決定的に左右するか、容易に想像できる。経済・貿易、安全保障、拉致、北方領土など、課題山積の国際情勢についての質問が日本テレビ政治部長の小栗泉氏、『報ステ』の後藤謙次氏、『23』の星浩氏の誰からも出なかったのは驚きよりも失望だった。

それが各局の方針なのか、番組によってはモリ・カケ問題に、全体の約3分の1を割くなど極端に内向き志向だ。

討論の基調は安倍氏に一方的に厳しく、獣医学部の新設を全く認めない歴史が52年間も続いた岩盤規制を、これからも続けさせようとしたいわゆる『石破4条件』について、石破氏の説明責任を求める声も全くなかった。

『エブリィ』の電話調査の結果、安倍晋三首相の『人柄が信頼できる』は支持理由の7番目にすぎなかったが、小泉氏は『森友・加計問題をめぐる安倍総理の説明について<納得していない>と答えた人が8割近くだ』とただした。

『報ステ』のキャスター、富川悠太氏も首相の説明に『納得していない人が全体の78%』だと指摘した。『23』は森友学園の籠池泰典氏の映像を紹介して安倍氏への疑惑を印象づける構成だった。小栗、富川両氏が、安倍氏の説明不足ゆえに8割もの人々が納得できないのだと信じているなら間違いだ。偏向報道の当然の結果である。

加計学園をめぐる真の問題は52年間も獣医学部新設が禁止されてきたことにある。文部科学省が勝手に決めた異様な岩盤規制だ。

文科省の前川喜平前事務次官(当時)が昨年7月の国会で、官邸の圧力で行政がゆがめられたと主張した。安倍首相主導の国家戦略特区がゆがめられた行政を正したのだと、加戸守行前愛媛県知事は主張した。

全テレビ局が加戸発言を事実上無視し、前川発言だけを報じた。当然、加計学園問題の真実は国民に伝わらない。問題の本質が岩盤規制の打破にあったという事実も忘れ去られた。

ここに至る過程で、日本獣医師会は既得権益を守ろうと石破氏をはじめ政界に働きかけていた。石破氏が安倍内閣の地方創生担当相だった平成27年9月9日、石破氏は獣医師会会長らと会った。学部新設の動きを阻止するために『誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にした旨(石破氏から)お聞きした』と報告書に記された。

いわゆる石破4条件である。説明責任を果たすべきは石破氏ではないか。テレビ局も含めてほとんどのメディアはこのことを報じない。富川氏は安倍氏の人柄が信用できないと8割近くが答えていると論難したが、その否定的イメージを作ったのは、テレビ局の偏った報道だと理解しているだろうか。ベテラン記者の後藤氏はどうか。政治部長の小栗氏はどうか。

論点は他にもある。内閣改造について後藤氏が挙党態勢の必要性を示唆すると、安倍氏は『自分はそういう立場は取らない。適材適所だ』と語った。派閥順送り人事でおよそ無能な人物が閣僚になった事例を私たちは苦い記憶として持っている。後藤氏が派閥均衡人事を勧めるのはなぜか。

エブリィと報ステは、斎藤健農林水産相が安倍陣営から『辞任圧力』を受けたと発言した映像を安倍氏に突きつけた。

安倍氏は報ステでこう語っている。総裁選前に斎藤氏が石破氏支持の了解を求めてきたので、自分は『どうぞ全力でやってください。同時に農水大臣としても全力でやってくださいね』と了解したと。テレビ局のネガティブな報道にもかかわらず、安倍氏は7割近くの支持を得て3選を果たした。総裁選は『石破善戦』ではなく、『安倍圧勝』なのである」。

コラムの主旨である「偏った情報発信の罠」は正論である。もりかけ問題の首相の説明に納得していない8割の民意をテコに石破氏は地方票45%の支持を得たが、安倍晋三首相は、全体の7割の支持を得て圧勝した。もりかけ問題がフェイクニュースであるとの証左である。

 

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