2018年3月20日 日経「米外交 一段と混乱も」「国務長官更迭 歯止め役失う」

日経に「米外交 一段と混乱も」「国務長官更迭 歯止め役失う」が書かれている。

「超大国・米国の政権の屋台骨を支える国務長官が突如、解任された。トランプ米大統領は13日、これまで何度も対立が表面化してきたティラーソン氏を国務長官の座から退かせ、後任に保守強硬派として知られるポンぺオ中央情報局(CIA)長官を指名した。トランプ氏が独善的ともいえる外交姿勢に一段と傾き、世界の混乱に拍車がかかる恐れがある。

トランプ政権ではこれまでもコーン国家経済会議(NEC)委員長ら、政権の主要幹部が相次いで辞任している。トランプ氏とティラーソン氏はこれまで外交政策でたびたび衝突し、ティラーソン氏の更迭論がたびたび取り沙汰されてきた。

対北朝鮮外交でも両者の溝は明らかだった。トランプ氏が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長と会談すると表明知る直前、ティラーソン氏は『交渉するには、まだほど遠い』と記者団に語っていた。

首脳会談に臨むにしても、場所や時期だけでなくトップ同士でどんなテーマをどこまで議論するのか外交当局が水面下で詰めておく必要がある。そんな大前提を無視するトランプ氏をティラーソン氏は危ぶんでいた。

イラン核合意や中東政策でも、強硬な姿勢に傾くトランプ氏をティラーソン氏がいさめ続ける構図が続き、政権として一貫した姿勢を持てなかった。ティラーソン氏が2017年7月の安全保障関連の非公開会合後、トランプ氏に『ばか』と吐き捨てたことも明らかになり、更迭は時間の問題とみられていた。

新たに国務長官に指名されたポンぺオ氏は共和保守派の元下院議員で、イラン核合意を批判し、イスラム移民排斥を支持するなど、トランプ氏と近い外交観を持つ。トランプ氏は安全保障担当閣僚としてポンぺオ氏への信頼を深めており、今回の指名につながったとみられる。

なぜこのタイミングでティラーソン氏を更迭したのか。米政府高官は13日、『北朝鮮との対話や様々な貿易交渉を控え、大統領はチームの一新を求めた』と明かした。

国務省の機能不全も深刻だ。シャノン国務次官(政治担当)やジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表が相次ぎ辞任。起用を内定していた在韓大使人事も白紙になった。幹部人事の空席も目立ち、正恩氏との会談に向けた準備にも不安が残る。米紙ワシントン・ポストによると、国務省幹部153人のうち、承認されたのは64人にとどまる。

更迭ドミノは続くのか。トランプ氏はロシアとの不透明な関係を巡る疑惑『ロシアゲート』への対応に関してセッションズ司法長官への不満を公言している。ホワイトハウス内の規律徹底をめざすケリー大統領首席補佐官とトランプ氏の対立もささやかれ、政権の動揺は収まりそうにない。

13日発表の米CBSニュースの世論調査では、トランプ氏の北朝鮮対応を支持するのは42%にとどまり、50%だった不支持が上回った」。

対北朝鮮外交でトランプ米大統領は、ハト派で穏健派のティラーソン国務長官を更迭し、保守強硬派であるポンぺオCIA長官を指名した。4月の南北首脳会談、5月の米朝首脳会談を文政権の背後でセットさせたのが、米CIAだからである。国務省は蚊帳の外であった。これがトランプ外交である。

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