2018年1月19日 日経「陸上イージス 中ロも念頭に」「ミサイル迎撃能力高める」「米の対ロ戦略にも合致」

日経に「陸上イージス 中ロも念頭に」「ミサイル迎撃能力高める」「米の対ロ戦略にも合致」が書かれている。

「政府は防衛能力向上の一環として、艦船などから発射する巡航ミサイルへの対処力を強化する。北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とすために導入する米軍の陸上配備型迎撃システム『イージス・アショア』に巡航ミサイルの迎撃能力を搭載することを検討する。中ロのミサイルの長射程化に対応し、両国への抑止力を高める狙いもある。

10日、米ハワイ州・カウアイ島。『今は弾道ミサイル防衛で考えているが、今後は巡航ミサイルや様々なミサイル防衛に総合的に役立つ基礎的なインフラに発展させていきたい』。日本が2基導入するイージス・アショアについて、小野寺五典防衛相は強調した。

イージス・アショアはイージス艦の迎撃システムを地上に配備するもので、弾道ミサイルを大気圏外で撃ち落とすのが主な役割だ。にもかかわらず小野寺が迎撃範囲の拡大に言及した背景には、中国やロシアによる巡航ミサイルなどの長射程化の動きがある。

たとえば戦闘機から発射し、地上の標的を狙う「空対地ミサイル」。防衛省によるとロシア軍の射程は4500キロメートル、中国軍も1500キロメートルに達し、自国や公海上から発射しても日本を攻撃できる。日本が専守防衛を貫き、敵の基地などを攻撃できない以上、こうした長射程ミサイルを確実に迎撃できる能力が必要になる。

布石は打ってある。政府は2018年度、米海軍が運用している迎撃ミサイル『SM6』の試験弾薬を取得し、性能評価に乗りだす。SM6は巡航ミサイルや航空機も撃ち落とせる多機能型のミサイルで、イージス・アショアに搭載するのは『技術的には難しくない』(防衛省幹部)という。海上自衛隊が保有するイージス艦も改修すれば運用可能という。

イージス・アショア導入は米国の対ロシア戦略にも合致する。米軍は16年5月にルーマニアで1基目の運用を始め、18年中には2基目をポーランドに配備する予定だ。いずれも『ロシアの核ミサイルへの抑止力を高める』(防衛省幹部)のが狙いで、日本にもイージス・アショアが配備されれば、ロシアの核・ミサイル防衛網が東西に広がることになる。

米国自身、最も警戒するのがロシアの核兵器や大陸間弾道ミサイル(ICBM)だ。米軍は長距離弾道ミサイルを撃ち落とす地上配備型の迎撃ミサイル『GBI』をアラスカ州やカリフォルニア州に40基以上、配備済み。早期警戒衛星などでミサイル発射の動きに目を光らせる。

このためロシアは日本のイージス・アショア導入に猛反発している。ロシア外務省は日本の導入決定について深刻な懸念を表明し、平和条約交渉を含む日ロ関係に悪影響を及ぼすとの見解を示した。日本政府関係者は『ロシアは最大の強みである核戦力が無効化されるのを強く警戒している』と話す。

日本はイージス・アショアについて『あくまでも北朝鮮への対処が目的だ』との立場だが、ロシア側の理解は得られていない。昨年12月に来日したロシア軍制服組トップのゲラシモフ参謀総長は小野寺氏との会談で、日本のイージス・アショアの運用に米軍がかかわる可能性に言及し、懸念を示した」。

政府は、北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とすために導入する米軍の陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」に巡航ミサイルの迎撃能力を搭載することを検討する。問題は、イージス・アシュアは米の対ロシア戦略と合致することである。米軍は16年5月にルーマニアで18年中には2基目をポーランドに配備する予定だ。ロシアの核・ミサイル防衛網が東西に広がる。同時に中国の核・ミサイル防衛網にもなり得る。中ロの反発必至である。

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