2016年5月26日 産経「自公VS.民共決戦」に「山形」「TPP与野党明暗」「農家根強い不信感」

産経の「自公VS.民共決戦」に「山形」「TPP与野党明暗」「農家根強い不信感」が書かれている。

「夏の参院選は、東北地方の自民党候補が苦戦する傾向が目立つ。背景にあるのは、昨年大筋合意した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に対する農家の根強い不信感だ。

<JA幹部でも苦戦>

サクランボの王様『佐藤錦』の産地で知られる山形県上山市。参院選山形選挙区から初出馬する自民党の月野薫氏は21日早朝、同市の選対事務所に地元農家ら約30人を集め、月野流の農業政策を説いた。

『各地の課題は同じ県内でも異なる。農業の現場を直接見てきた私は、地域に軸足を置く政治を目指す』

月野氏は全国農業協同組合連合会(JA全農)の元山形県本部副本部長。自民党県連が月野氏を擁立したのは、TPPをめぐりJAの政治団体・県農協世家路連盟(農政連)と続けてきた対立を終わらせるためだ。

県農政連は平成25年の参院選で、今回野党の統一候補として出馬する舟山康江元参院議員を推薦した。舟山氏は落選したが、当選した自民党の大沼瑞穂氏に約2万票差まで迫った共産党候補の約3万票を加えれば、舟山氏が逆転した計算になる。

県内にはJA正准組合員約15万人がおり、県農政連は絶大な集票力を持つ。長年国政選挙で自民党候補を推薦したが、民主党政権の22年参院選は自主投票。25年参院選はTPP交渉参加を決めた安倍晋三政権に猛反発し、大沼氏の推薦依頼を断った。以後、両者の冷戦は尾を引いていた。

両者の橋渡し役を担う月野氏は『TPPを批判するだけではだめ。山形のためにどうすればいいのか、現場の声を直接国に届ける』と訴え、農家を細かく回る。ただ、自民党が先月行った世論調査は『舟山氏が月野氏に大差をつけた』(党県連幹部)といい、支持はなかなか拡大しない。

山形は全国的にみてもTPPの影響が大きい。例えば生産量全国一を誇るサクランボの関税率(8・5%)は、TPP発効後に段階的に下げられ、6年目に撤廃される。年間の国内生産量1・9万トンに対し輸入量は1万トンもあり、影響は座視できないのだ。

政府が聖域を守ったとうたう県内のコメや畜産農家も、支援の動きは鈍い。自民党の山形県議は『政府の農業対策や農協改革の真の狙いを説明するが、簡単に通じない』と頭を抱える。

<交渉の過去触れず>

『TPPで国のあり方がすべて壊されるようなことは阻止する。間違った政権にブレーキをかける』

舟山氏は21日、JR山形駅前で街頭演説に立ち、TPPで大筋合意した安倍政権を執拗に攻撃した。共産党の小池晃書記局長も駆けつけ、『自国民が食べる食料は自分たちで作る。国の形を破壊するTPPをストップさせる』と強調。沿道には同党支持者が頻繁に掲げる『アベ政治を許さない』のプラカードが林立した。

舟山氏はかつて旧民主党に在籍し、TPP交渉参加を最初に言い出した菅直人政権で農林水産政務官を務めた。だが今の舟山氏は往時の経緯を口にせず、反TPPを声高に叫ぶ。

TPPは昨年10月に大筋合意し、自民党には反TPP熱の沈静化を期待する向きもあった。ただ今国会でTPP承認案と関連法案の成立が見送られ、舟山氏を支援する農業関係者は『巻き返すチャンスができ』と逆に追い風を感じる。

県農政連は17日、TPPの国内対策のあり方などに関する質問状を山形選挙区の各参院選候補に送付。回答を見て、30日に推薦者を決めるという。自民党県連幹部は『今回は月野氏を推薦するだろう』と期待するが、不安感は消えないままだ」。

自民党が先月行った世論調査で、野党統一候補の船山氏が、自公候補の月野氏に大差をつけているという。TPP反対で県の農政連の票が船山氏に回っているからである。逆転の秘策は、衆参同日選しかないが。

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