2014年12月17日 日経「漂う有権者 半数棄権」「無党派層が分散 組織政党、有利に」

日経に「漂う有権者 半数棄権」「無党派層が分散 組織政党、有利に」が書かれている。

「衆院選は与党勝利となった。安倍晋三首相が有権者から一定の期待を集める一方、野党は政権批判票を多く取り込めなかった。有権者の関心が高まらず、投票率は過去最低を更新。有権者の半数が棄権する状況は、組織力で勝る自民や公明、共産各党に有利に働いた。特定の支持政党を持たない無党派層の多くは棄権したとみられるが、1票を投じた無党派層は分散した。

現行の小選挙区比例代表並立制が導入された1996年以降、自民が最も多い議席を得たのは小泉純一郎首相時代の2005年衆院選の296議席だった。情勢調査ではそれに迫る勢いを一時示していた自民だが、結局は公示前勢力を下回った。

それでも政権側は信任されたという認識だ。菅義偉官房長官は14日夜のTBS番組で『私どもは当然(信任を)受けたと思っている』と述べた。減らしたとはいえ、約290の獲得議席は過去の衆院選と比較しても高い水準にはある。各選挙区で1人しか当選できない小選挙区制は、得票率の差はわずかでも勝敗を大きく分ける。

共同通信社の出口調査によると、自民の小選挙区の得票率は40%後半だが、全295選挙区の7割強での勝利をうかがう。野党の得票率は民主が2割強、共産党が1割強、維新の党が1割弱。05年、09年、12年と4回連続で1党に大きく振れる『雪崩』現象を招いた。

与党勝利を後押ししたのは投票率の低下だ。小選挙区の投票率は過去最低だった前回12年の59・32%を下回る見通しで、組織型政党に追い風になった。企業・団体や個人後援会を基盤とする自民のほか、創価学会を支持母体とする公明党や固い支持層を持つ共産党はいずれも好調な戦いだった。

なぜ投票率が低かったのか。東大の境家史郎准教授(政治学)は『有権者の投票参加につながるような明確な争点や対立軸がなかった。安倍政権が争点に掲げた消費増税延期の是非も主要政党に大きな差はなかった』と指摘する。報道各社の情勢調査で自民の優勢が伝わり、政権交代の可能性が低いとみた有権者が投票意欲を一層低下させた、との見方も示す。

今回の衆院選はインターネットを使った選挙運動の解禁後、補欠選挙を除いて初めての参院選になった。13年参院選に続いて若年層の関心が高まるのか注目されたものの、効果は限定的だったとみられる。

無党派蘇はどう動いたのか。投票行動論が専門の早稲田大の田中愛治教授は『多くが投票に行かなかった公算が大きい。無党派層はあまり風を起こさなかった』とみる。自民に無党派層を引き付ける力は弱い。民主政権時に味わった民主への失望は有権者の意識に残り、維新の党は前身の日本維新の会が分裂するなど、第3極の離合集散にも不信を抱いていると分析する。

共同通信社の出口調査で『支持政党なし』と答えた無党派層に投票先を聞いたところ比例代表で21・1%が自民に投票した。民主は20・8%、維新は21・7%、共産は17・7%%だった。公明7・4%、次世代の党3・9%、社民党3・2%、生活の党2・9%と続いた。

小選挙区では自民31・7%、民主28・5%、共産18・8%、維新11・2%の順だった。自民にとっては無党派層から一定の票を獲得したことも勝利に寄与した。ただ、投票所に足を運び、自民を選んだ無党派層は『ほかよりはまし』という消極的な理由だった可能性がある。

比例代表での政権批判票の「受け皿」は民主、維新、共産に分散。無党派層を頼った民主は思うように取り込めなかった」。

今回の衆院選は、与党の圧勝となったが、自民党単独で317議席を獲得できたのにと、安倍首相にとっては千載一遇の好機を逸したとの悔いが残る結果となった。終盤情勢調査で、自民党が単独で317に迫る勢いを示していたからである。

その根拠は無党派層の自民支持である。序盤情勢調査での、無党派層の投票先で、自民4割、維新1割、民主1割、共産1割が、終盤情勢まで続いたからである。だが結果としての共同の出口調査では、自民21・1%、民主20・8%、維新21・7%、共産17・7%となっている。自民党を投票先としていた無党派層が半減し、維新、民主を投票先に変えたからである。

最後の3日間にアンダ―ドック効果が効いたのである。自民党を勝たせすぎてはいけないとのブレーキがかかり、無党派層が4党にほぼ均等に分散したのである。結果、自民党は317議席から291議席と26議席減となったのである。安倍首相の悲願である憲法改正には、衆参両院での3分の2の議席が必須であり、無党派層の自民支持取り込みが絶対条件となる。

問題は、その無党派層に共産党支持が広かっていることである。無党派層が容共化しているからである。「平和という名の戦争」にしてやられている

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