2013年12月4日 産経 「環球異見」 「中国、尖閣上空に防空識別圏設定」

産経の「環球異見」に「中国、尖閣上空に防空識別圏設定」が載っている。
「中国が、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定したことに国際社会から批判が噴出した。日米安保条約で尖閣を防衛義務の対象としている米国は、B52爆撃機を飛行させるなど、中国との対立も辞さない姿勢を表明。英国などからも『愚かな行動』との声が上がる中、中国の防空圏に同国と管轄権を争う海中岩礁、離於島(中国名・蘇岩礁)が含まれた韓国も危機感を強めている。
<ニューヨーク・タイムズ>「米国は立ち上がる必要」
米紙ニューヨーク・タイムズは11月25日付の社説で、中国による防空識別圏の設定について、米国は空や海での航行の自由を守るために日本などを支援する必要性があるとした。ただし尖閣諸島周辺での不測の事態を避けるためには、日本に大胆な行動をとらせないようにすることが重要だとの考えも示している。
社説は冒頭で、中国の防空圏の設定は、領土争いの平和的な解決を主張する姿勢と食い違っていると主張。『極めて挑発的で、緊張を高め、日本との直接的な衝突の可能性を高めた』と批判した。
また中国は尖閣諸島周辺に交船や航空機を送り込むなどして『不安定化を作り出した』と強調。防空圏設定は日本による施政に対するさらなる挑戦だとし、米国による中国の習近平政権との関係強化を目指す取り組みを大きく複雑化させると論じた。
また中国の一方的な行動を踏まえ、『米国は日本や他のアジア諸国のために立ち上がる必要がある』とした。
社説は中国が将来的な防空圏の拡大の可能性に含みをもたせていることを踏まえ、『現段階では中国の行動が最も気がかりだ』と牽制。中国が日本などの航空機に軍事的な対応をとる意思があるかどうかは不明だとしつつ、不測の事態の可能性が高まっているとしている。
さらにバイデン副大統領の中国などへの訪問にふれ、米国との間で『新型の大国関係』を目指すとした習近平政権の意図に『新たな疑問が出ている』と、改めて米中関係への影響に懸念を示した。
ただし社説はこれまでの経緯について、『極めて国家主義的な』安倍晋三政権がしばしば混乱を作る要因となってきたとも指摘する。さらに安倍首相の外交方針について『中国に対する過激な言葉や攻撃的な態度に偏っている』との見方も示し、オバマ政権は安倍政権に中国との緊張を高める『愚かなリスク』をとらせないようにしながら、日本の国益を守る道を探らねばならないとしている」。
<フィナンシャル・タイムズ>「中国の無責任なゲーム」
「英紙フィナンシャル・タイムズは『危険なゲーム』と題する11月26日付の社説で、中国の防空識別圏設定により、『偶発、故意による(日中)衝突の可能性が高まっている』と懸念を表明、日本への圧力を強める中国に挑発行為をやめるよう求めた。
社説はまず、尖閣諸島をめぐる論争が19世紀末にさかのぼり、『戦争で日本に盗まれた』とする中国側に対し、日本側は、無人島であることを確認し、1895年に合法的に日本領に組み込んだとしていることを紹介。中国は『古代から自国の固有領土』と譲らず、『領土問題が存在する』ことを日本に認めさせたがっているが、日本はこれを受け入れていないと解説した。
そのうえで、『尖閣諸島は100年以上にわたり日本の実効支配下にある。中国は威嚇行為でその現状を打破しようとしている』として、『中国の行動は愚かだ』と切り捨てた。
さらに、中国の狙いが『潜水艦の重要航路に位置する尖閣諸島を支配下に置いて、その行動範囲を広げるという海軍の野心実現と、(日本への)歴史的報復にある』と指摘。だが、『尖閣諸島は日米安全保障条約で米国の防衛義務の対象となるため、事態がエスカレートすれば危険は倍増する』と警告した。
今後については、『中国政府が国際法に照らしても自らの主張は正しいと確信できるのなら、国際仲裁機関への提訴を目指すべきだ』と提案。一方で『日中両国は問題の解決を将来の世代の知恵に任せて棚上げし、以前の状態に戻すよう努めて漁業権や石油探査権など天然資源の共同管理を目指すべきだ』との見解も披露した。
社説は中国には別の狙いもあるのではないかとの懸念も示す。中国が、日米同盟に亀裂を生じさせる手段として尖閣諸島をとらえているのなら、『それは無責任なゲームだ』と断じた」。
米紙ニューヨーク・タイムズは11月25日付の社説で、「米国は日本や他のアジア諸国のために、立ち上がる必要がある」と主張した。正論である。米国との間で「新型の大国関係」を目指すとした習近平政権の意図に「新たな疑問が出ている」からである。バイデン副大統領の日韓中歴訪は、その確認のために、である。

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