2018年4月10日 産経 加藤達也「虎穴に入らずんば」「軟化装う『正恩優等生』」
産経の加藤達也の「虎穴に入らずんば」に「軟化装う『正恩優等生』」が書かれている。
「専用列車で極秘訪中した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、中国の習近平国家主席との首脳会談でしおらしい優等生のようだったと話題になっている。会談の様子を伝える中国のニュースでは確かに、両腕を椅子の肘掛けにゆったりと預けて語りかける習氏と、発言を書き取る正恩氏が教師と生徒のようだ。
今回の会談では両国の和解が演出されたが、史上最悪とさえささやかれた中朝関係の下、急転接近した両首脳の思惑や背景をめぐって、むしろさまざまな憶測を呼んでいる。
正恩氏は、米朝首脳会談前に中国の後ろ盾を得たい。習氏も北朝鮮への影響力を再度、米国に見せつけられる。利害一致だ。北朝鮮にはさらに、対中関係改善をてこに対話姿勢を広く印象づけ米国の軍事、制裁の圧力を下げる効果も狙えた。
中国の北朝鮮への接近について、実は今年に入って中国共産党の外交窓口である中央対外連絡部(中連部)幹部が日本の有力与党政治家を対象に、対北認識や政策の軟化を誘導しようと動いたフシがある。
中国筋によると与党有力者に中連部は『正恩氏は平昌五輪を足掛かりに対話姿勢に転換する』と予告し、『転換の最大要因は制裁による国内経済の行き詰まりである』と主張した。
また正恩氏の性格が『金日成主席に似て、決断したら必ず実行する』と強調し、《米国が軍事行動に出たり周辺国が極端な制裁措置を科さない限り、対話の方針は容易に揺るがない》と見通したという。
正恩政権の軟化を強調する〝分析″に、情報当局者は『北朝鮮を信じ、刺激を避けるよう日本に求めたメッセージ』を読み取った。
首相官邸では、今年1月、『国際社会は北朝鮮との対話局面に入った』との認識が語られていた。潮目はカナダでの20カ国外相会合で明確になり、その後、北朝鮮は平昌五輪を利用して南北融和を演出。一方で南北、米朝の両首脳会談へ乗り出すなど対話攻勢を続けた。ただこれまでのところ、北がメディアで核放棄への意思を示したと確認されておらず、北朝鮮が対話姿勢からさらに核放棄へ〝改心″したと信じるのは冒険だろう。
トランプ大統領との首脳会談を『5月まで』に控えた正恩氏は、体制保証を取り付けるための情報収集と戦略作りの真っ最中だ。
こうした中での中朝首脳会談。解明したい重要テーマには対米戦略も含まれていたに違いない。
トランプ政権は人事が不安定で、硬化と軟化の往復で外交政策も先を見通せない。先日もマクマスター大統領補佐官を解任、後任に対北強硬派のボルトン元国連大使を指名した。
米国政治に詳しい島田洋一福井県立大教授によると、ボルトン氏は弟子にあたる米安全保障政策センターのフレッド・フライツ副所長を、国家安全保障会議の部下に迎える可能性がある。
フライツ氏は北とイランが核・弾道ミサイル技術で連携して、米国と同盟国に重大な脅威を与えていると強く警戒しており、近著では北への予防的な軍事攻撃について詳細に書いたほどだ。揺れて先行き予測を難しくしているトランプ政権の新たな安保ラインが、逆に北を揺さぶっている可能性がある」。
金正恩氏は、中国の習近平国家主席に命乞いをし、段階的非核化への支持を取り付けたが、5月の米朝首脳会談ではトランプ大統領は完全非核化を迫る。決裂必死となるが。決裂を回避するには、拉致問題と経済援助の日本カードに金正恩氏が乗るしかないが。