2017年7月1日 日経「米韓首脳会談(29~30日)」「初対面、北朝鮮巡り反乱も」
日経に「米韓首脳会談(29~30日)」「初対面、北朝鮮巡り反乱も」が書かれている。
「米韓首脳会談が29~30日、ワシントンで開かれる。5月に就任した文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとってはこれが初の外国訪問。トランプ大統領と個人的な信頼関係を築き、自らの信念である北朝鮮との対話に理解を得たい考えだ。だが直前になってトランプ氏の態度を硬化させかねない悪材料が続出しており、初顔合わせは波乱含みだ。
『トランプ大統領と私には共通の目標がある。北朝鮮による核の完全廃棄と朝鮮半島の非核化だ。その達成には2人の信頼と友情が重要だ』。文氏は米紙ワシントン・ポストとのインタビューで、訪米に向けた抱負を語った。
首脳会談では最大の懸案である北朝鮮の核問題が主題になる。韓国大統領府によれば、米韓は首脳間の共通ビジョンを確認。それは北朝鮮による核の完全廃棄を究極の目標とし、制裁と対話を含めたあらゆる手段を動員する。北朝鮮との対話は正しい条件が整えば可能になる――というものだ。こうした目標を達成するための共同案を検討する。
北朝鮮が非核化への具体的措置をとるまで交渉しないオバマ前政権の『戦略的忍耐』を、トランプ政権は『制裁と対話』に転換した。武力行使も選択肢に圧力を強めつつ、核・ミサイル開発を放棄すれば金正男(キム・ジョンウン)委員長との首脳会談に応じ、武力侵攻もしないとする。
一方の文政権は、朴前政権の制裁一辺倒から南北対話へカジを切ろうとしている。2000年の南北首脳会談から17年の記念式典があった15日に、核とミサイルの追加挑発をやめれば『北朝鮮と条件なく対話する』と踏み込んだ。
タカ派のトランプ氏とハト派の文氏。対北朝鮮政策は正反対にも見えるが、文氏の理解は違う。米CBSテレビとのインタビューで、オバマ前政権の『戦略的忍耐』を『失敗』と断じた。むしろトランプ政権による圧迫は北朝鮮に積極関与するという点で、自らの対話路線に通じると考えている。首脳会談で文氏は、『圧力』より『対話』に重きを置き、北朝鮮を交渉のテーブルに着かせようとトランプ氏を説得するとみられる。
だが、そんな文氏の思惑を吹き飛ばしかねない悪材料が次々と浮上した。一つは北朝鮮に拘束され、意識不明になって米国に帰国した大学生が死亡した事件。米国社会に北朝鮮への反感が広がり、トランプ氏は19日『米国は北朝鮮の政権の残忍さを改めて非難する』との声明を出した。
もう一つは、文氏の外交ブレーンが16日、訪問先のワシントンで、北朝鮮が核・ミサイル開発を中断すれば『米韓合同軍事演習の縮小を米と協議する』と発言したことだ。米国では韓国が相談もなしに北朝鮮に譲歩するのではないかとの疑心が広がった。
米韓関係はただでさえ、米軍による地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備を巡ってぎくしゃくしている。文氏が首脳会談で持論の南北融和論を声高に訴えにくい雰囲気になったのは確かだ。米韓自由貿易協定(FTA)が米国の貿易赤字を膨らませていると不満を募らせるトランプ氏が、協定の再交渉を主張するなど、両国は経済面でも火種を抱える。
トランプ氏の出方について韓国政府は予測不能と気をもむ。元米国家安全保障会議アジア上級部長で、現在は米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級副所長を務めるマイケル・グリーン氏は韓国・朝鮮日報とのインタビューで、米韓首脳会談が『(どの問題がはじけるかわからない)ロシアン・ルーレットになりうる』との懸念を示している」。
マイケル・グリーン氏は「米韓首脳会談」が「ロシアン・ルーレットになりうる」との懸念を示したが正鵠を突いている。決裂もあり得るが。だから文氏は君子豹変せざるを得ない。