2017年1月4日 日経 「真相深層」 「長期政権へ連合に秋波」「民共連携、急接近を後押し」「首相拒絶から融和に転換」

日経の「真相深層」に「長期政権へ連合に秋波」「民共連携、急接近を後押し」「首相拒絶から融和に転換」が書かれている。

「安倍晋三首相と民進党の支持母体である連合が距離を詰めている。首相は22日に連合の神津里季生会長を首相官邸に招き会談。神津氏は首相と労働政策などを協議する『政労会見』の再開を要請した。2012年の第2次政権発足後、一貫して連合を拒んできた方針をなぜいま転換したのか。

『共に理解し合いながら進めなければ実を上げられない。これからも様々な提言や意見を賜わりたい』。首相は会談でこう呼びかけた。神津氏も『非常に意義深い話し合いだ』と応じ、首相と労働政策などを協議する『政労会見』の再開を求めた。

話し合いの中心は政権の目玉である働き方改革だった。首相が『政権最大の挑戦の一つが働き方改革だ。経済を浮揚させるうえで重要だ』と語ると、神津氏も『その点は全く同感だ』と応じた。担当閣僚は小・中学校で神津氏と同級生の加藤勝信一億総活躍相。新設した『働き方改革実現会議』の委員に神津氏を入れ、距離を縮めてきた。

<政策に共通点>

自民党は昨年10月の神津氏の会長就任以来、二階俊博幹事長ら幹部が連合側と接触を重ねてきた。今では連合執行部が自民党の会合に出て、政府の施策を『連合の政策と共通点が多い』(逢見直人事務局長)と歓迎する。

首相の思惑は政策面だけではない。『野党の状況はちょっと面白いね』。周囲にこう語る首相が注視するのは、野党と連合を取り巻く関係だ。

首相は次期衆院選での民進党と共産党との共闘を警戒する。日本経済新聞社が14年の前回衆院選の小選挙区で現在の野党4党が候補者を一本化した場合の勝敗を試算したところ、自民、公明両党は計60選挙区で逆転され、自民党単独では過半数を割る結果が出た。

ところが連合は、民共連携に不信感を強めている。連合はかつて共産党系労組と激しく対立してきた。『共産党とは相いれない関係なので連携はあり得ない』。神津氏は22日の記者会見でこう断言した。10月の衆院補欠選挙では共産党の支援を受けた民進党候補者の事務所から連合の運動員が手を引く事態も起きた。

<民進離れ進む>

連合の民進党離れはすでに進んでいる。連合執行部内では、全国約680万人いる組合員のうち若者を中心に自民党支持が3割近くまで増えているというのが共通認識だ。執行部には『賃上げできなかった旧民主党を応援する理由はない』との厳しい意見が寄せられる。賃上げに積極的な安倍政権への接近は、執行部には求心力維持の一助となる。4年連続の『官製春闘』を前に、労組としての存在意義を問う声が少ないのもそのためだ。

連合内では政権交代が当面期待できそうにない民進党ではなく、与党との関係強化に活路を見いだすべきだとの声もある。『新しい民社党をつくった方がいいんじゃないか』。連合執行部の中には、かつて保守系労組を中心に立ち上げ、自民党が長期政権を維持した55年体制下で連携したことがある民社党に言及する者まで現れてきた。

ある自民党幹部は『連合が離れた民進党が共産党と連携して左派色が強まれば、政権交代の可能性もそれだけ減る』と語る。首相周辺は『あわよくば新しい<55年体制>を狙いたい』と連合への接近の思惑を語る。

条件は整いつつある。民進党は党名を変え、新代表を蓮舫氏に選んだが支持は広がらない。安全保障など党内で路線の違いがあっても表立った政策論争はなく、活力に欠く。自民党内でも『ポスト安倍』をにらんだ派閥活動が再び活発になりつつある。派閥間の競争で党の政策の幅が中道へと広がれば、民進党の支持層にも食い込める。

首相周辺は衆院解散の時期について、簡単に政権交代が起きないよう『野党に決定的な打撃を与える機会を見極めたい』と語る。ただそれは政権交代可能な二大政党政治の時代が再び遠のく道でもある。民進党が国民から政権担当能力を疑われるような状況が続くなら、そんなシナリオも現実味を帯びてくる」。

連合680万人いる組合員のうち若者を中心に自民党支持が3割もある。自民党支持を6割まで広げられれば、民進党離れは決定的となる。官公労と民間労組の分裂である。次期衆院選がその秋となる。

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