2016年7月28日 朝日の社説に「トランプ候補」「米国を孤立させるのか」

「世界の警察官の役割を担え」

朝日の社説に「トランプ候補」「米国を孤立させるのか」が書かれている。

「これが世界の安定と発展に大きな責任を担う国の指導者にふさわしい演説だろうか。米共和党の大統領候補に指名されたドナルド・トランプ氏が受諾演説をした。世界が『不安定化』し、米国もすっかり『安全』を失ったと強調した。

偉大な米国を取り戻すという訴えは近年の大統領選の決まり文句だが、トランプ氏の『米国第一主義』は異例ずくめだ。自由貿易を推進してきた党の立場を覆し、保護主義的な貿易政策を唱えている。不法移民を阻む国境の壁の建設や、テロを許した国からの移民停止を主張し、貿易だけでなく人の流れも制限しようとしている。

世界の秩序が流動化しているのは確かだが、その危機感を理由に国ごと殻に閉じこもろうというのは、あまりに時代錯誤的な孤立主義というしかない。

二大政党の党大会は、選挙に向けて党内の結束を固めると同時に、候補者が描く国の将来像を示す場でもある。過激なトランプ氏も正式な候補になれば、現実的な政策に転じると考えた国民も多かったはずだが、それも期待はずれに終わった。

豊かで強い米国の地位は、国の門戸を大きく開いて築かれたものだ。自由と機会を看板に、人材と富を世界から受け入れた歴史の上に成り立っている。つまり米国こそがグローバル化の世界最大の受益者なのだ。

にもかかわらず、グローバル化の負の面ばかりを説き、国を閉じればすべての難題が解決するかのような幻想を振りまく政治手法は、ポピュリズムのそしりを免れまい。かえって国益を損ねる可能性がある英国の欧州連合離脱と同じ構図だ。

さらに憂慮されるのが、トランプ氏が同盟関係の意義に理解を示さないことだ。演説で『米国が防衛する国々に相応の負担を求める』と述べ、米紙には『他国にかかわるより、わが国を第一に考える』と語った。

日本や欧州などの同盟国との協力関係を米国が軽んじれば、世界の安保環境は激変する。強国が力任せに周辺国を脅かしたり、独裁政権が人権を侵害したりする行為が各地で続く今、同盟国が結束して危機を封じる意義はむしろ増している。

テロの拡散や難民の流出を防ぐための紛争解決や、経済危機の連鎖を止めるための国際協調などの大切さを考えれば、米国といえども、もはや一国主義に閉じこもる余裕はない。

偏狭な『米国第一主義』は、米国にも世界にも利益をもたらさないことを、共和党候補トランプ氏は学ぶべきである」。

社説の主旨である「米国を孤立させるのか」は正論である。トランプ氏の「米国第1主義」が、孤立主義であり、世界の警察官としての役割を放棄するとの宣言に等しいからである。

問題は、トランプ氏が大統領になれば。日本や欧州との同盟関係が崩れ、世界の安保環境が激変することである。強権主義の中国、ロシアの増長、テロの拡散、拡大を増幅するのみとなる。パックス・アメリカーナとしての世界秩序の崩壊である。米国をして再度「世界の警察官の役割を担う」との覚悟を持った大統領の登場が希求される。トランプ氏は最も不適格、クリント氏はより適格となるが。

pagetop