2013年8月7日

東京の「核心」に「政権内野党、公明に重責」「地金あらわ自民と違い鮮明」「議員数8分の1、ブレーキ役の正念場」が書かれている。

「参院選で大勝した自民党と、連立を組む公明党が、重要政策で温度差を露呈している。改憲や集団的自衛権の行使容認などに向け『地金』を見せる自民党。一方、『平和の党』を標ぼうし弱者対策を重視する公明党。野党の存在感が低くなる中、巨大与党と『政権内野党』の関係が政策決定で極めて重要になっている。

『枢要な立場にある政治家は、発言には重く配慮するのが重要だ』。公明党の山口那津男代表は1日の記者会見で、不快感を隠さなかった。

批判の矛先は麻生太郎副総理兼財務相。改憲派有識者らが集まる会合で講演し、ドイツのナチス政権時代を引き合いに『あの手口を学んだらどうか』と発言したからだ。麻生氏の発言は、歴史認識と改憲が絡んだ『二重の舌禍』。平和の党としては看過できない。

麻生氏は発言を撤回した。しかし安倍政権は参院選後、それまで封印してきたタカ派的な政策や発言を隠さなくなった。

安倍晋三首相は選挙直後の記者会見で、政府の憲法解釈を変更し、同盟国などが攻撃された場合、自国が反撃できる集団的自衛権の行使を容認することに意欲を表明した。さらに政府は『政府の憲法解釈の番人』と呼ばれる内閣法制局長官を交代させ、法制局経験のない外務省出身者の起用を決めた。人事によって憲法解釈を変更する方向に突き進んでいる。      

公明党に十分相談ないままの決定に、ある党幹部は『信頼を損なうやり方だ』と憤る。消費税増税についても相互不信が広がりつつある。首相は法律に基づき来年4月、8%に引き上げると明言しない。経済情勢をみながら慎重に見極めようとしているからだ。

だが公明党側からすると、増税反対論の根強い支持母体・創価学会の意向を押し切って賛成した経緯があるだけに、首相の煮え切らない姿勢はおもしろくない。

政策が違う自公両党が連立を続ける理由は、数と選挙。『数』の方は、公明党の議席がないと参院で過半数に達しないことが存在理由となる。だが、自民党の国会議員が衆参両院合わせて409人(衆参両院議長を含む)に上るのに対し、公明党は51人。わずか8分の1の与党だ。

創価学会という強力な支持組織を持つ公明党との選挙協力は自民党にとって大きな恩恵であり続けている。だが政治日程では今後3年間、衆参両院選挙が行われない可能性がある。自民党にとって公明党のありがたみが減る環境にあるのは間違いない。

少数政党が政権内で存在感を発揮することが難しいことは歴史が証明してる。ロッキード事件を機に、金権政治の打破を目指して自民党から離党した河野洋平元衆院議長らで1976年に結成された新自由クラブは、83年の衆院選で自民党が過半数割れしたことに伴い、連立政権に加わった。しかし、3年後の衆院選で自民党が300議席を獲得すると、存在理由を失い解党した。

自民、社会(現社民)、新党さきがけにより94年に樹立された連立政権では、社会党の村山富市委員長が首相についた。だが社会党は自衛隊を合憲と認めるなど自民党に譲歩することが多く、4年後に連立は解消した。

冷遇されても連立維持にこだわる政党は『げたの雪』と表現されることがある。げたの雪は、踏み付けられてもなかなか離れないからだ。井上義久幹事長は『国民目線や平和を守ることを重視して、言うべきことはきちんと言う』と強調する。政権内のブレーキ役としての役割を果たすか。『げたの雪』と評価されるか。発言が実行力を伴うかどうかにかかっている」。

巨大与党の中にあって、「政権内野党」としての公明党に、ブレーキ役としての重責が与えられた。1強多弱体制となり、自民党の暴走をけん制し得るのは、公明党のみだからである。衆院では、自民党が295で絶対多数を占めており、公明党31はブレーキ役にならないが、参院では、自民党が114で、過半数121に、7議席足らず、公明党の20議席がブレーキ役となるのである。参院選で自民党が単独過半数72議席に届かず、65議席にとどまったからである。民意が自民党の勝ち過ぎを警戒し、公明党に、ブレーキ役を託したのである。政府・自民党は、この意味を正しく理解し、「黄金の3年間」公明党に配慮した、慎重な政権運営を期すべきである。

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