2015年8月31日 朝日「7月経済統計」「物価上昇に賃金追いつかず」「求人23年ぶり水準」
朝日に「7月経済統計」「物価上昇に賃金追いつかず」「求人23年ぶり水準」が書かれている。
「雇用は改善したが、家計の消費は冷え込んだまま――。28日に発表された経済統計では、こうした傾向が改めて浮き彫りになった。求人は増えているものの、賃上げが広がりを欠くなかで、消費増税や円安の影響で物価が上がり、消費を冷やしている。
『雇用情勢は着実に改善が進んでいる』。塩崎恭久厚生労働相は28日の閣議後会見で、こう語った。
厚労省が示す雇用情勢の判断には、6月まで『一部に厳しさがみられる』という表現があった。しかし7月は、この表現を削除。昨年1月以来、1年6カ月ぶりに判断を上方修正した。
雇用の好調さは、人手不足を映し出したものだ。有効求人倍率は前月を0・02ポイント上回る1・21倍。1・2倍台は1992年2月以来、23年5カ月ぶりだ。求人は1・5%増えたが、職についた人も増え、求職者は0・2%減った。地域別で最も低い埼玉、沖縄でも0・84倍。完全失業率も3・3%と前月から改善した。
ただ、雇用者(原数値)の状況は業種ごとにばらつきがある。7月を産業別でみると、製造業は前年同月で4カ月連続のマイナスだった。医療・福祉が全体を押しあげているが、『高齢化による医療や福祉分野の人手不足という構造要因で雇用者数が伸びている。景気の影響を受ける製造業などは、長い目で見れば増えていない』(SMBC日興証券の牧野潤一氏)との指摘もある。
<食料品値上げ相次ぐ>
一方、個人消費は低調だ。7月の家計調査(速報)で2人以上の世帯を使ったお金は28万471円。物価の影響をのぞいた実質で前年7月より0・2%減った。減少は2カ月連続。
内訳をみると、住宅のリフォーム代や自動車の購入費などの高額な支出が減った。消費増税前の駆け込み需要の反動がまだ残っているとみられる。そのほか、教育費や交際費も減った。
実質ベースでみた消費は、昨春の消費増税で大きく落ち込み、その後の回復の動きは鈍い。現在も、増税前の水準を5%程度下回ったままだ。背景にあるのは、物価上昇の影響を除いた実質賃金の低下だ。消費増税に加えて、円安に伴う輸入物価の上昇で、乳製品や肉類、菓子など食料品の値上げが相次いだため、実質賃金は増税前より3%程度低い。
食品価格の上昇は足元でも続いている。この日発表された7月の全国の消費者物価指数(2010年=100)で、食料(生鮮食品のぞく)は前年7月より1・6%上昇した。原油安の影響でガソリンや電気代などは下落し、物価全体(生鮮食品をのぞく)では前年7月から横ばいだったが、買い物の機会の多い食料の値上げが、家計の節約意識を高めているとみられる。
<先行き、賃上げがカギ>
消費回復の行方のカギをにぎるのは、やはり賃上げだ。賃金を増やす会社は増えてはいるが、体力のある大企業が中心で、広がりが乏しいとの指摘もある。
経済産業省が28日に発表した調査では、今年の春闘で賃金を引き上げた企業のうち、賃金体系を底上げするベースアップを決めた企業の割合は、東証1部上場企業(755社)では前年度より14ポイント増えて67%となったが、中小企業(4967社)では5ポイント増の27%にとどまった。
企業全体でみた賃上げの水準についても、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は『消費増税も加えた物価上昇に、十分に追いついていない』とみる。円安の恩恵を受ける輸出型の製造業を中心に、企業業績は好調だ。政府はさらなる賃上げを呼びかけてはいるが、第一生命経済研究所の熊野英生氏は『賃上げを促す税制を整備するなど、もっと所得を増やすアイデアを色々と検討すべきだ』と指摘する」。
7月の経済統計で浮き彫りにされたのは、雇用は改善したが、家計の消費が冷え込んだままである。物価上昇に賃金は追い付いていないからであるが、その根底には消費増税の悪影響がある。個人消費の意欲を抑え込んでいるからである。大幅減税が必須となるが。17年4月からの再増税も見送りすべきとなる。