2015年7月11日 読売「スキャナー」「『強制労働』日韓が対立」「世界遺産、審議混乱」
読売の「スキャナー」に「『強制労働』日韓が対立」「世界遺産、審議混乱」
『韓国、外相合意覆す」「日本妥協、声明を修正」が書かれている。
「日本が世界遺産に推薦した『明治日本の産業革命遺産』の審議をめぐる混乱は、6月の日韓外相会談で登録への協力を表明した韓国が態度を硬化させ、世界遺産委員会で『朝鮮半島出身者が強制労働させられた』と発言することにこだわったためだ。5日の審議直前、日本は韓国側の主張を大きく受け入れる形で登録を実現させた。
5日午後、『明治日本の産業革命遺産』の世界遺産登録決定後、佐藤地・ユネスコ大使が淡々と声明を読み上げた。声明はわずか2分。韓国との事前協議で練られた内容だ。続いて、韓国の趙兌烈外務第2次官が声明を発表した。『本日の決定は、被害者の苦難を記憶にとどめるための重要な一歩となる』と称賛した。
5日の審議直前までもつれ込んだ日韓の交渉は、韓国側が主張する強制性に踏み込む形で決着し、日本の交渉筋は『韓国が世界遺産を人質に文言修正を強く迫った』と悔しさをあらわにした。世界遺産登録の決議文には脚注として、『世界遺産委員会は日本の発言に留意する』と明記された。日本が情報センター設置など、声明の内容を実施するよう念押ししたもので、議長国ドイツの提案だった。
交渉で焦点となったのは、審議での発言で『強制性』に触れるよう求めた韓国の要求にどう対応するかだった。韓国側の狙いは、日本の資産の一部が『強制労働』の現場だったことを国際機関の公式な議事録に残すことだったとみられる。
韓国政府は施設の徴用工について『強制労働(forced labor)』だったと主張してきた。交渉の末、日本側は『意思に反して連れて来られ、厳しい環境で労働を強いられた(forced to work)』との表現を盛り込むことを受け入れた。
これについて、岸田外相は5日夜、外務省で記者団に『これまでの日本政府の認識を述べたものだ。forced to workとの表現は<強制労働>を意味するものではない』と説明した。だが、韓国の尹炳世外相は5日、『日本政府は、強制労役に従事したという趣旨の発表をした。私たちの正当な懸念が忠実に反映される形で決定されたことをうれしく思う』と述べた。韓国は当初、『強制労働』に触れると主張してきたが、声明からはこの文言を削除した。
6日の日韓外相会談で韓国は登録への協力に合意したが、韓国は世界遺産委員会で態度を硬化させた。
変化の背景には、日本への妥協に反対する強い世論がある。韓国では戦時中に日本に徴用されたとして、慰謝料や未払い賃金の支払いを求める訴訟が少なくとも11件進行中だ。
日韓両国は、1965年の『日韓請求権・経済協力協定』で請求権問題は解決されたことを確認した。だが、韓国最高裁は2012年、個人請求権は消滅していないとの判断を示しため、訴訟は急増。今年4月には668人が日本の69社を相手に過去最大の集団訴訟に乗り出した。
ユネスコ諮問機関が5月、日本に『各施設の歴史全体を理解できるような計画』を17年12月までに準備するよう求めたことも、韓国の世論をあおった」。
施設の徴用工について韓国政府は「強制労働」だったと主張し、日本政府との調整の末、「強制労働」の文言は削除し、替わりに「意思に反して連れて来られ、厳しい環境で労働を強いられた」との表現で折り合った。禍根を残したと言える。事実上、「強制労働」を認めたからである。