2013年10月20日

産経の「阿比留瑠比の極言御免」に「論理的でない河野氏の言葉」が書かれている。

「慰安婦募集の強制性を認めた『河野談話』は、やはり国民を欺いた政治的妥協の産物だった。河野談話の根拠の決め手となったのが、韓国・ソウルで行った元慰安婦16人への聞き取り調査である。それが、産経新聞が入手した調査報告書で驚くほどお粗末な内容であることが明らかになったのだから、談話を一方的に押し付けられている国民はいい迷惑だ。

政府はこれまで、聞き取り調査の内容について情報公開請求しても『非開示』としてはねつけてきた。それは名目である個人情報保護のためではなく、実際は中身がずさんなので表に出せなかったのではないか。

本来なら河野談話の主役である河野洋平元官房長官に直接問いただしたいところだ。だが、残念ながら産経新聞の取材は受けてもらえないので、河野氏の言葉を他媒体から引用したい。『日本政府調査団の慎重姿勢に徐々に心を開いた16人が当時、<出所や中身は公表しない>との約束で口を開いてくれた』(平成20年10月8日付読売新聞)。

河野氏は聞き取り調査内容を公表しない理由についてこう主張するが、実際には日本での慰安婦賠償訴訟の原告が5人いる。日本の新聞のインタビューを受けて連載記事で取り上げられた人も、安秉直ソウル大教授(当時)ら韓国側が行った聞き取り調査に応じ、元慰安婦の『証言集』に収録されている人もいた。

つまり、日本政府が内容を秘匿することにあまり意味はないのである。また、河野談話作成にかかわった当時の政府高官は今回、産経新聞に河野氏の主張と矛盾することを語った。『私は公開してもいいと言ったが、河野さんが<絶対だめだ>と反対した』。

どちらの言い分が本当かはまだ『藪の中』だが、いずれにしても河野氏の発言は情緒的すぎる。河野氏は月刊誌『世界』の昨年10月号のインタビューではこんな言い方をしている。『日本政府の調査に対し、当事者の方々がその辛い体験を話してくださったのは、こちらの姿勢への信頼が生まれて初めて語ってくださったのです。<証拠がな>という批判は、その信頼を裏切るものだ』とはいえ、実際の調査は1人当たりわずか約3時間程度で、それも通訳を介してのやりとりである。安氏ら韓国側の調査のように、5、6回面会してじっくり話を聞いたわけではない。

また、河野氏は当事者の信頼を裏切るなというが、およそ論理的ではない。まるで、元慰安婦の証言はすべて丸ごと信じるべきだと言わんばかりで、そこには事実関係の追及・解明という視点も、国益という観点も見あたらない。

一方、福井県立大の島田洋一教授が19年3月にソウルで安氏と会った際、安氏はこう語ったという。『私も元慰安婦の聞き取りも含め詳しく調査したことがあるが、調べた限り、日本軍が女性を強制動員して慰安婦にした客観的資料はない。研究者として証拠といえる証言もなかった』。河野氏より韓国の学者の方がよほど事実に対して謙虚であり、良心的だと感じる」。

慰安婦募集の強制性を認めた「河野談話」の根拠が崩れたが、「河野談話」の見直しにつながるかは、不透明である。菅官房長官が言うように「歴史学者らによる学術的な検討が望ましい」からである。時間をかけての検証作業が不可欠だからである

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