2015年8月23日 日経「朝鮮半島どうなる」

日経の「朝鮮半島どうなる」に専門家のコメントが載っている。

「北朝鮮と韓国が砲撃を交え、南北関係が緊張している。背後や今後の見通しを専門家に聞いた。

<拡声器放送が体制の脅威>文聖ムク・韓国国家戦略研究院統一戦略センター長
北朝鮮にとっての最優先課題は金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の体制安定で、韓国による対北拡声器放送は体制安定を脅かす決定的な要素だと考えている。世襲の金正恩政権を維持するには住民と軍人の目と耳をふさぎ外部情報を遮断することが極めて重要だ。

対北放送で北朝鮮の前線地域の軍人と住民に外部情報が流入すれば、金正恩政権が失政と権力を合理化するために重ねてきたウソが明らかになる。北朝鮮は軍人と住民の結束に亀裂が生じるため放送に強く反発し、中断させようとしている。

2010年の韓国哨戒艦『天安』爆沈事件や延坪島砲撃事件に続いて最近の地雷埋没まで、韓国軍は北朝鮮の挑発に強力に対応できなかったとの批判が韓国で強い。北朝鮮が挑発を続ける原因になったと判断している。今回は、強力な対応によって北朝鮮による韓国への挑発を防止するという原則に基づいている。

韓国軍が北朝鮮の脅威に屈服して対北放送を中断することは考えられない。だが、北朝鮮が一連の軍事挑発の責任を認めて再発防止を約束すれば可能だ。今後の展開は北朝鮮の選択にかかっている。軍事衝突の拡大、現状維持の双方があり得る。(北朝鮮が)対話で解決する意思を実践的に見せれば、その可能性もあるだろう。

<緊張続けば韓国経済打撃>深川由紀子・早稲田大教授
朝鮮半島の緊張はいまのところ韓国経済に大きな悪影響を及ぼさないと思う。軍事的な衝突が拡大すれば南北とも人的、経済的な損失が過大になることをよく分かっている。緊張は次第に沈静化するとみる方が自然だ。

(地域が不安定になることで)韓国通貨ウォンに対する下げ圧力が強まり、自動車産業などの輸出競争力はかえって高まるかもしれない。それでも偶発的な衝突は起こる可能性があり事態を見守らないといけない。緊張が続けば韓国経済への影響は様々な形で表れる。例えば南北軍事境界線の近くには大手化学メーカーなどの拠点が多く、安定供給に不安が生じ、顧客離れが起きることも考えられる。韓国経済全体でみれば、プラスよりもマイナスの影響の方が大きいといえる。

韓国は米中との関係を深めている。この秋には朴槿恵(パク・クネ)大統領の訪中、訪米が控えている。北朝鮮はこのタイミングであえて対韓関係を緊張させることで、金正恩(キム・ジョンウン)体制が弱腰になっていないと国内外に改めて示した可能性がある。

韓国も北朝鮮向けの宣伝放送、砲撃への応戦といった強い姿勢で臨んでいる。背景にはこれまで北朝鮮寄りだった中国が、韓国に近づくというように判断の変更をしてくれるとの期待がある。朴政権は対中関係への配慮に余念がない」。

22日、韓国、北朝鮮両国は高官協議を行うことで電撃合意し、同日夜、板門店で韓国の金寛鎮国家安保室長と北朝鮮の金正恩第1書記の最側近とされる黄炳瑞朝鮮人民軍総政治局長が会談した。緊張緩和につながるかは依然不透明。

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