宇都宮健児氏インタビュー「市民運動と都政へのチェック機能について 」

アメリカの場合、共和党と民主党が闘って、元々サンダース氏も両方ではないものの、結果的に民主党の枠組みの中で旋風を起こしてきた。

一方で日本が60年安保のことを振り返っても、市民運動が盛り上がって、しかし敗北した。
といった時に、もちろん草の根の運動だからこそ主体というのはないのかも知れないんですけど、野党共闘になるのか、それとも市民連合あるいは市民運動など、どういったところから次のそういった運動は作り上げていかなくちゃいけないんでしょうか?

宇都宮:市民連合から一つの政党が出てきてもいいし、市民連合の活動家が野党に入ってもいいし、どういう形かというのは予測はできませんけどね。
あるいはサンダースさん自体は無所属だったわけですよ。無所属だけど、自分の政策を訴えるためには民主党に加入したほうがいいということで、民主党の予備選で自分の政策、連邦レベルの最賃を7.5ドルから15ドルに引き上げるとか、富裕層に対する課税を強化して公立大学の授業料を無償化するとか、そういうような政策を大統領選で訴えることができたわけです。
また無所属に戻るというようなことも聞いているんですけど、運動のやり方は様々あると思います。

ただ市民運動の課題というのはほとんど、法律を変えたり制度を変えないと実現できないような課題ばかりなんです。そうするとやっぱり選挙闘争で勝ち抜かないといけないですよね。
そこを抜きにして、デモとか集会だけではいつまでたっても負け続けだし、勝てないですよね。
選挙闘争とデモとか集会をどう結合するのかということを考えないとだめだし、選挙闘争を考えたら日常的な活動が極めて重要になります。
盆踊りに出たり、夏祭りに出ろというわけじゃないけど、それはやはり保守の側がなぜ強力な支持を得ているのか、それを分析し、敵から学ばなきゃだめですよね。そういう謙虚さが必要だと思います。

今後も、選挙の闘争自体は終わっても、そういう運動あるいは政治的な活動は続いていくと。

宇都宮先生は今後も、小池さんへのしっかりとしたチェック機能を作っていくということはメディアで仰っていたんですけど。

宇都宮:それは、選対の「希望のまち東京を作る会」というものができているんですけど、そこは解散はしていないですし、ああいう苦渋の選択はしたんですけど、参加している人はもっとこれまで以上に都議会傍聴をやって、しっかりチェックして、都政を変える運動をやろうとしています。これは非常に重要だと思います。

非常な大きな政策の枠組みで言うと、たとえば築地の問題だったり、それから五輪の問題、このあたりはクリアに議論が今後どう進んでいくかということをチェックしなくちゃいけないと思いますけども、同時に貧困だったり福祉、この問題について、どういった部分で小池さんに対してのチェック機能を果たしていくのでしょうか。

宇都宮:「希望のまち東京を作る会」では、こちらが考えてる貧困とか格差の問題についての政策の要請行動をやろうかというような議論にもなっています。
ただ今のところは小池さんは都民ファーストと言っていますからね。都政改革本部を作って、情報公開を徹底して、五輪の件についてもチェックすると。
それから公用車の問題とか、高額な海外出張についてもルール作りをやると言っていますので。
都民ファーストという話とは少し違うかもしれませんが、もっと中身について、貧困とか格差の問題、それをどう彼女が対処しようとするのかということはチェックもしないといけないし、ちゃんと聞いてくれるかどうかはわかりませんけど、こちら側からの提言をしようかという話にはなっています。

福祉、貧困、格差の問題以外にも、たとえば外国人の人権だったり、そういった問題はリベラリズムの立場から一つ大きな争点になるかとは思うんですけども、早速今、韓国人の学校に関して新しい動きが出ていますが、このあたりなんかは、宇都宮先生のほうではどういうふうに見ているんでしょうか。

宇都宮:韓国人の学校の問題を彼女は白紙撤回すると言っていますけど、もう一度どうするかというのは、その土地の利用の問題もある、待機児童の問題で保育所の土地が重要ということもあります。
ただ、小池知事が韓国人の学校だからだめだと、つまり今の日本の社会の雰囲気としては反韓・反中ですよね、もしそういうことを考えて反対しているというのだとすると、それは問題だと思います。
なぜかというと、私達が調べたところ、2006年か2007年頃、フランスの学校に都は土地を提供しているんです。フランスはよくて、韓国はだめだというのであれば問題です。
ただその土地が、ほかのところがあるのか、その土地は保育所や介護施設に使いたいからということなのか、そのへんがもっと調査すべきだと思うんです。
記者会見の時もそれを聞かれたんで、アプリオリに韓国人の学校は認めないというような立場は私はとらない、しかも認めないという理由が「韓国人だからだめだ」ということであれば、最近のヘイトスピーチ対策法なんかができているし、そういうことからも、問題のある対応ですよね。

外国人格差、そして今回の鳥越さんの問題の中でも仰っていましたが、女性の人権、女性の活躍といった文脈で考えた時に、非常に世界的にみても大きな都市で女性が首長になったと。

小池さんが今後どういう形で女性の活躍あるいは女性の人権といったものに力を入れていけばよいのか、何かお考えはありますか。

宇都宮:まず、都庁における女性の幹部の登用の制度が、男女平等に扱われているのかどうかという問題があるのと、女性の立場というのは、日本は特にそうでうけど、女性の賃金のほうが低いんですね。これは正社員も、非正規も含めて。
そういう男女格差を是正できるかどうかということ。
それからやはり、セクハラの問題とか性暴力、こういう問題の被害者が後を絶たないので、私達はそういう問題についての相談窓口の設置、これは女性の人権を守る活動をやられている女性団体と連携して、そういう窓口作りの提案をしていたので、まあそういうこともあって、ますます鳥越さんの対応は大変都知事候補としては不適格だなというふうに思ったんです。

その辺は小池新知事が女性の人権という視点で、どういうことに取り組まれるかというのは非常に関心を持っています。
彼女自身が女性であるので、女性がトップに立たれたというのはいい面があるんですけど、彼女は強い女性ですよね、頭も切れるし。
だけど本当に性暴力、セクハラで被害にあっている人達の痛みをちゃんと受け止められるような知事になってもらいたいと思うんです。

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