2015年1月27日 日経 社説 「ECB量的緩和が政府に迫る構造改革」

「安倍首相は農協改革を急げ」

日経の社説に「ECB量的緩和が政府に迫る構造改革」が書かれている。

「欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和の導入に踏み切った。米連邦準備理事会(FRB)が利上げ時期を探る中で、ECBが新たに潤沢な資金の供給源になるとの期待も膨らんでいる。日米欧の株価が上昇するなど、金融市場にはひとまず安心感が広がった。

だがユーロ圏に限らず、経済の持続的な成長を金融政策だけに頼るべきではない。中央銀行にできることは、危機を先送りする時間稼ぎにすぎない。市場がとりあえず安定している間に、ユーロ加盟国の政府は財政再建と構造改革を急がなければならない。

現在のユーロ圏の姿は、昨年10月に日銀が2度目の金融緩和を実施した日本の経済にも通じる。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは『量的緩和という劇薬で麻酔にかかった状態』と指摘する。麻酔とは、改革という手術をするための一時的な措置だ。いったん開腹して手術を始めたからには、病巣を切り取るなどの改革を素早く実行し、体を修復しなければならない。その手際が悪ければ生命が危なくなる。退路は断たれており、改革が急務であるとの認識を、執刀医である政治指導者は肝に銘じるべきだ。

ECBが量的緩和に至るまでの過程で気になるのは、各国政府による露骨な政治圧力だ。フランスのオランド大統領はECBの決定に先立ち、量的緩和が既定の事実であるかのように発言した。議会選挙を控え、ユーロ圏からの脱退も取り沙汰されるギリシャの野党は、同国の国債を買い入れるようECBに公然と要求した。

ECBのドラギ総裁は、財政が危機的な状況であるギリシャの国債の買い取りについて、財政再建の公約順守などの条件を付けた。同国で25日の議会選後に発足する新政権が、ECBの要求に応えられなければ、ユーロ圏への信頼は再び揺らぎかねない。

量的緩和などの非伝統的な金融政策の手段は、緊急時の危機回避には有効だが、中銀の独立性が侵される事態に至ってはならない。緩和マネーがあふれて、競争力がない企業や銀行が淘汰されずに延命する副作用もありうる。一部の不動産や株などが高騰する局所バブルへの目配りも欠かせない。

中銀が政権に改革を迫る構図は日本にも共通している。デフレ脱却と景気回復に向けて次に動くのは政府の番であり、成長を実現する主役は企業である」。

社説の結語である「中銀が政権に改革を迫る構図は日本にも共通している。デフレ脱却と景気回復に向けて次に動くのは政府の番であり、成長を実現する主役は企業である」は、正論である。

欧州中央銀行(ECB)が量的緩和の導入に踏み切ったが、危機を先送りする時間を稼いだのだから、この間にユーロ加盟国の政府は構造改革を急が根ならない。日本も同じである。昨年10月に日銀が2度目の金融緩和を実施したが、構造改革は、未だ進捗していないからである。

問題は、安倍首相の覚悟次第である。財務省主導の消費再増税を解散権行使で1年半先送りさせて時間を稼いだが、構造改革を進捗させるタイムリミットは、16年のダブル選までの1年半しかない。26日から始まる通常国会で、農協法改正案の成立が必須となる。4月の統一地方選の争点に農協改革の是非が必然となる。先送りは許されない。自民党内の改革勢力の結集が急務となる。

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