2014年2月7日 朝日 「時時刻刻」 「ベア広がり焦点」「春闘幕開け」

朝日の「時時刻刻」に、「ベア広がり焦点」「春闘幕開け」が書かれている。

「経団連と連合の労使首脳による会談を皮切りに春闘が幕を開けた。上昇し始めた物価にあわせ、企業は賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)を認めるのか。中小企業の働き手や非正規労働者にも、賃上げの『すそ野』は広がるのか。春闘が問われている。

<大手に前向き姿勢も>
5日の会談で、連合の神津里季生事務局長は『月例賃金にこだわる』と切り出し、5年ぶりにベアを要求する方針を伝えた。経団連の米倉弘昌会長は『業績改善が賃上げにつながる好循環をつくり出すべく努力したい』と理解を示した。

2002年以降、春闘の平均賃上げ率は2%を下回る。定期昇給分を差し引くと、ベアゼロの状態が10年以上続く。連合は、賃金が上がらないことが購買意欲を失わせ、物価が下がるデフレを長引かせたとして、『ベア1%以上』の要求方針を決めた。

円安で好業績の自動車メーカーの労組は、軒並みベアを要求するとみられる。今期の営業利益が過去最高となる見通しのトヨタ自動車。豊田章男社長が『業績が上がれば報酬で報いるのは当然』と、前向きなこともあり、トヨタ労組は4千円のベアを要求する方針。鶴岡光行委員長は『デフレ脱却を主張してきてチャンスがきた』と意気込む。主な労組は2月中旬までに要求を提出し、3月中旬に会社からの回答がでそろう。

久々の『賃上げ春闘』の舞台をつくったのは、安倍政権だ。安倍晋三首相は昨秋に『政労使会議』を立ち上げ、労使から賃上げに向けた協力を取り付けた。経済閣僚からは『賃上げしない会社には<公表するぞ>と脅せばいい』との強硬論も漏れる。経団連幹部の一人は言う。『首相は法人税率の引き下げにも意欲を見せる。寄り添わない選択肢はない』

<中小や非正規は高い壁>
こうした盛り上がりから取り残されかねないのが、中小企業だ。東京都大田区の金属加工会社の社長(47)は『仕事は増え始めたが、先行きがどうなるかわからない。給料は上げられない』と明かす。パートや派遣社員の非正規労働者はさらに厳しい。今や働き手の4割弱(約2千万人)を占めるが、賃金は月給ベースで20万円前後。勤続年数を重ねてもほとんど増えない。連合は時給を30円底上げする要求を掲げるが、非正規の大半は組合に加盟していない。

民間の労使行政研究所によると、労使や専門家が予想する今春闘の賃上げ率の平均は2・07%。定期昇給分を除くと、ベアは0・2%程度だ。経営者の多くが、将来にわたり人件費を増やすベアよりも、一時金で報いる姿勢のためだ。

一方、14年度の物価上昇率は消費増税分を含めて3・3%とされている。物価上昇のペースに賃金の伸びが追いつかない。『経済の好循環』の道筋は不透明だ」。

今期の営業利益が過去最高となる見通しのトヨタの豊田章夫社長は「業績が上がれば報酬で報いるのは当然」と前向きであり、トヨタ労組の4000円のベア要求を呑む方針である。好業績な自動車業界は右にならえとなるが、他業界はどうなのか、である。問題は、昨年12月30日の高値から2000円超暴落した日経平均株価を、3月末までに1万6000円台に戻すのが最優先課題であることだ。戻らずして、ベアの広がりはないからである。

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