2019年1月11日 毎日「2019年世界経済は」「景気減速懸念高まる」

毎日に「2019年世界経済は」「景気減速懸念高まる」が書かれている。

堅調な成長を続けてきた世界経済だが、2019年は中国経済の失速などによる減速懸念が高まりつつある。最大のリスク要因が米中の貿易戦争で、両国の交渉が不調に終われば、世界全体に大きな影響を及ぼす恐れがある。他にも、英国の欧州連合(EU)離脱などの問題を抱え、正念場の年になりそうだ。

<米、利上げ巡り神経戦>

最大の経済大国として世界をけん引してきた米国では、2009年7月に始まった景気拡大が19年7月に戦後最長の10年間(1991年4月~2001年3月)を超える。市場では19年も拡大が続くとの見方が大勢だが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げや、トランプ政権の政策停滞などの影響で景気が減速する懸念もくすぶる。

国際通貨基金(IMF)の昨年10月時点の見通しでは、米国の18年の経済成長率は2・9%。失業率がほぼ半世紀ぶりの低水準となる良好な雇用環境に支えられ、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が好調なほか、トランプ政権の大型減税効果もあり企業業績の拡大が続く。

今年の焦点の一つは、今後のFRBの利上げペースと、20年を想定する利上げ終了時期だ。市場はFRBの利上げが景気を引き締めすぎることを懸念して神経質になっており、昨秋以降に金融市場が不安定化。NY株式市場のダウ工業株30種平均は、10月の史上最高値から年末にかけて大幅に下落した。世界経済が減速する中、米経済の『独り勝ち』がいつまで続くのか不透明感もあることも背景にある。

トランプ大統領の予期せぬ政策がもたらす混乱もリスク要因だ。米議会では1月の野党・民主党が下院の過半数を占める『ねじれ』が生じ、政策停滞は必至だ。すでに『国境の壁』を巡る対立で政府機関の一部閉鎖が続いており、政治の混乱が企業や個人の心理を悪化させる恐れもある。

<中、消費下支えに必死>

景気減速が鮮明になっている中国では、習近平国家主席が財政政策を積極化することで景気の腰折れを防ぐ構えだ。しかし米中貿易戦争など下押し圧力は山積しており、2019年は厳しい経済運営を強いられそうだ。

これまで旺盛な個人消費と堅調な輸出、国有企業を主体にしたインフラ投資の3本柱に支えられてきた。しかし、米国との貿易戦争が消費者心理の冷え込みにつながり、消費動向を示す11月の小売売上高の伸び率は15年半ぶりの低水準に下落。18年の新車販売も28年ぶりに前年実績を割り込む見通しだ。米国による追加関税で割高になった中国製品の対米輸出も『19年以降、徐々に悪影響が拡大していく』(アナリスト)と見られ、柱の2本が大きく揺らぐ。

習指導部は地方政府に債権発行拡大を指示するなどインフラ投資を必死に煽るが、効果はまだ限定的だ。中国の18年の成長率目標は『6・55%前後』。政府系シンクタンクの中国社会科学院は、18年は6・6%前後と目標を上回るものの、19年は6・3%に減速すると予測する。諸費などの動向次第ではさらなり下方修正を迫られる可能性もある。

<日、消費増税懸念>

日本経済は2012年12月に始まった現在の景気拡大が19年1月に74カ月に達し、戦後最長となる可能性が高い。引き続き緩やかな景気拡大が予想されるが、最大の試練となるのが,10月に控える消費税増税だ。

14年4月の前回増税時には、同年4~6月の期の国内総生産(GDP)の実質成長率はマイナスとなり、個人消費の回復に時間がかかった。政府は10月の増税による経済へのマイナス影響は2兆円程度と試算。景気の落ち込みを回避するため、19年度は約2兆円の経済対策と自動車減税など3000億円程度の減税を実施し、下支えを図る構えだ。

このほか市場では、米中貿易戦争の激化や世界経済の失速などの海外要因で景気下押し圧力が強まるとの見方が強い。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは『増税対策で内需は堅調でも、外需が失速すれば景気は減速する恐れがある』と話している。

<英、合意なきEU離脱 混乱必至>

欧州で最大のリスクとなるのは3月末に予定される英国の欧州連合(EU)からの離脱だ。英議会ではメイ首相がEUと合意した離脱協定案に対する反発が強く,1月中に実施される予定の議会採決で協定案が拒否される可能性が残っている。その場合、離脱後のEUとの関係について、何の合意もないままEU単一市場や関税同盟から離脱することになり、混乱は避けられそうにない。

5月に実施される欧州議会選挙も注目される。加盟各国の議会選挙に比べると関心が低いとされ、有権者がポピュリズム(大衆迎合主義)に流される傾向があるため、移民流入などに反対する極右政党の躍進が有力視されている。秋にはユンケル欧州委員長、トゥスク大統領、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁がそれぞれ任期満了を迎え、退任する予定。議会と行政機関の顔ぶれが一新される中、共通通貨の下で統合を深化させてきたユーロシステム改革など山積する課題にどのように取り組むのかが問われる。

<貿易戦争最大リスク>

世界経済にとって最大のリスク要因は米中による貿易戦争で、各国が両国の交渉の行方を注視している。米中は2018年12月1日の首脳会談で『一時休戦』で合意し、米国が対中制裁強化を見合わせる代わりに、90日間の通商協議を始めることを決めた。

米国は巨額の対米貿易黒字是正に加え、中国による外国企業に対する技術移転強要の中止や、中国のハイテク産業育成策『中国製造2025』の見直しなどを求めている。納得のいく回答が得られなければ、18年9月に発動した年間輸入総額2000億ドル(約23兆円)相当の中国製品に対する追加関税率を。3月2日に現行の10%から25%に引き上げるとしている。

経済協力開発機構(OECD)の試算では、米国が2000億ドル相当の関税率を引き下げた場合、米国に経済成長率は年0・4ポイント、中国は0・6ポイント下げられ、世界経済に少なからず悪影響を及ぼすとみられる。減速基調が鮮明になる中、中国は『これ以上の関係悪化は避けたい』のが本音で、対立回避に躍起になっている。報復措置として米国車に課している25%の追加関税措置を1月1日から3カ月間、暫定的に停止することを決めたほか、手控えていた米国産大豆の大量購入も再開した。18年12月23日には外国企業に対する技術移転の強要禁止などを盛り込んだ法案を提出するなど、通商以外の分野でも歩み寄りの姿勢をアピールしている。

しかし、米国は抜本的な、見直しを迫っており、小幅な譲歩にとどめたい中国側との溝は依然深いままだ。

米国が中国製通信機器が中国政府によるスパイ活動に使われる恐れがあるとして同盟国に中国製品排斥の働きかけを強めていることも新たな火ダネになっている。18年12月には中国機器最大手、華為技術(ファ―ウエイ)幹部が米国の要請を受けたカナダ政府に一時拘束された。中国側はファ―ウエイ問題と通商問題を切り離して対応する方針だが、一連の米国側の動きには『何の証拠も示すことなく、中国製品排斥など様々な障害、制限を設けている』(中国外務省)といら立ちを隠せない」。

最大の経済大国である米国の景気拡大が19年も続くと想定される。2009年7月からで、19年7月に10年を超え、戦後最長となる。米中貿易戦争が激化しても、である。敗者は中国となり、景気後退となり、経済成長率は実質6%の半減となる。日本経済は1ドル=108円の円高に直撃され、景気減速となり、消費増税は凍結となるが。

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