2017年5月25日 日経「真相深層」「北朝鮮包囲網ほぼ完成か」「北ミサイル300発で圧力」「農繁期控え兵糧攻めも意識?」

日経の「真相深層」に「北朝鮮包囲網ほぼ完成か」「北ミサイル300発で圧力」「農繁期控え兵糧攻めも意識?」が書かれている。

「北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる米朝の対立が膠着するなかで、米国は北朝鮮の軍事的な包囲網をほぼ整えた。朝鮮半島近海に米国の空母や原潜を展開。北朝鮮が『レッドライン(軍事行動を起こす基準となる行為)』を越えれば即応できるように、推定で300発の巡航ミサイルが北朝鮮の地下施設などに照準を合わせている。北朝鮮の譲歩を引き出す圧力は確実に高まっている。

<物資移動を観察>

米海軍は4月8日、シンガポール付近にいた空母カール・ビンソンを朝鮮半島に向かわせると命じたと発表。実際はインドネシア方面を迂回し、北上に時間をかけた。すぐに朝鮮半島近海に向かわなかったのはなぜか。空母の運用情報をめぐり米政権内の混乱も取り沙汰されたが、複数の安全保障関係者は『真相はまったく違う』という。

米海軍の動きに慌てたのは米朝鮮軍だった。『米朝の軍事衝突は近い』と判断し、臨戦態勢に入った。通常の演習とは桁違いの物資や要員を地下施設に送ったり、有事にしか使わない通信電波を飛ばしたりしたようだ。米軍は詳しく観察し、どの地下施設にどの程度の物資の出入りがあったかなどを基に、真に攻撃すべき標的を絞り込んだ。

米軍はただちに空母打撃群を朝鮮半島近海に送り込むぞとフェイントをかけ、北朝鮮の構えの虚実を見極めようとした。カール・ビンソンの陽動作戦で時間を稼ぎ、北朝鮮の重要な施設をピンポイントで攻撃できる準備を整えたといえる。

北朝鮮が6回目の核実験や長距離の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に踏み切った場合、米軍は奇襲攻撃に出る可能性が現実にある。『核爆弾を際限なく量産する北朝鮮の核計画をつぶす最後のチャンスだと米軍は考えている』(日本の安保関係者)。核実験場やウラン濃縮施設、弾道ミサイルの移動式発射台を隠したトンネルなどに向け、米軍は巡航ミサイルを撃ち込む。その数は推定300発。シリア攻撃の5倍の規模となる。

主力は海軍だ。4月25日には改造型オハイオ級戦略原子力潜水艦が韓国南岸に姿を現した。1隻で約150発の巡航ミサイルを撃てる。原潜の位置情報は味方にさえ打ち明けない秘中の秘だが、あえて姿を見せて北朝鮮を強くけん制した。16日には、横須賀で定期改修を終えた空母ロナルド・レーガンが出港した。カール・ビンソンと合わせて2つの空母打撃群を使えば、巡航ミサイルの数としては十分だ。

米軍は海軍に加え、米本土や在日米軍基地から戦略爆撃機を飛ばした空爆も視野に入れる。アフガニスタンの過激派組織『イスラム国』(IS)のトンネルを破壊した大規模爆風爆弾(MOAB)など、北朝鮮の地下施設を無力化できる特殊な爆弾を平壌北部にある北朝鮮軍司令部の破壊に使う可能性もある。金正恩氏はここで有事の指揮をとるとされる。

<緊張続けば痛手>

米政権は軍事力を背景に北朝鮮に外交圧力を強め、大型の挑発に出てくれば攻撃も選択肢とする二段構えでいる。米軍の攻撃に反撃し、北朝鮮軍は韓国の首都ソウル一帯に数千発の長距離砲やロケット弾を撃ち込む可能性もある。一方、米韓合同軍は北側の発射地点をレーダーで瞬時に割り出し、戦闘攻撃機や無人機で破壊を始める。その部隊は今春の米韓合同軍事演習への参加の名目ですでに現地にいる。北朝鮮の火砲は自走できない旧式が多い。米韓軍に遅かれ早かれ破壊され、北朝鮮の砲撃は長く続かないというのが多くの専門家の見立てだ。

米朝対立が長引けば、北朝鮮は深刻な経済的ダメージを受ける。北朝鮮の田植えは6月が期限とされる。兵士は農繁期に欠かせないマンパワー。田植えの遅れは、秋の食糧危機を招きかねない。米国は北朝鮮の兵糧攻めも意識しているようだ。

北朝鮮は14日、新型の弾道ミサイルを発射し、挑発をやめない。10日就任した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は北朝鮮との融和を探る。米中日を交えた駆け引きは激しくなりそうだ」。

北朝鮮包囲網がほぼ完成し、カール・ビンソンとロナルド・レーガンの2隻の空母打撃群の配置となり、6月の田植え期限まで圧力をかけ続ける。兵糧攻めである。金正恩委員長にとって痛手となるが。

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