2017年2月7日 東京の社説に「国防長官来日へ」「安保『見直し』の起点に」

「安保『再強化』の起点に」

東京の社説に「国防長官来日へ」「安保『見直し』の起点に」が書かれている。

「マティス米国防長官が来日する。駐留米軍経費の負担増を求めるトランプ新政権の閣僚として初の訪問だ。日米安全保障条約体制を総点検する好機である。日米安保『見直し』の起点にすべきだ。

マティス国防長官が韓国に続き二月三日から日本を訪問する。稲田朋美防衛相と会談し、安倍晋三首相への表敬も予定されている。

マティス氏は米上院公聴会でアジア太平洋地域の安全保障について『優先事項の一つだ』と強調した。日本政府は来日を『新政権発足後、早い段階でアジアを訪問することは、アジア太平洋地域での米国の関心の高さを示すものだ』(稲田氏)と歓迎する。

日米安保条約は日本防衛のための『攻撃力』を米軍に委ねる代わりに、『極東地域』の平和と安全のために、日本側に米軍への基地提供義務を課す。日本に基地がなければ、米軍はこの地域への展開のために膨大な軍事費を要するだろう。日米安保は『双方が利益を享受する』(首相)もので、米側だけが負担を強いられ、日本側だけが利益を得るわけではない。

しかし、トランプ大統領は就任前から、日本など『同盟国』に一層の負担増を求めてきた。

日本が安保条約などに定められた基地提供義務を誠実に果たしていることや、財政的には条約などで定められた以上の負担をしていることなど、日米安保の実態を理解していないのではないか。

日米防衛相会談や来月予定される日米首脳会談では、安保体制の実態や条約の「双務性」への正確な理解を促す必要がある。負担増要求に安易に応じてはならない。

日米安保をめぐっては費用負担よりも、沖縄県に基地が集中していることや、日米地位協定の不平等性の方がより深刻な問題だ。

首相が『同盟』と呼ぶ日米安保を『不変の原則』とせず、米国での政権交代を機に、安保体制が抱えるあらゆる問題を俎上(そじょう)に載せて総点検し、見直したらどうか。

冷戦終結で存在意義を失いかけた日米安保体制は一九九六年、目的を『アジア太平洋地域の平和と安定の維持』に再定義して命脈をつなぎ、今では地域の『平和と繁栄の礎』とされる。より持続可能なものとするには『再々定義』する必要があろう。

沖縄県民の基地負担を抜本的に軽減し、地位協定の不平等性も改める。駐留経費負担も条約などに従って適正化する。日本側にとって米国追随でない、より対等で主体的なものに『進化』させたい」。

社説の主旨である「安保『見直し』の起点に」異論がある。

マティス米国務長官が来日するが、日米安保「再強化」の起点にが、正論だからである。トランプ新政権の対中国戦略が強硬戦略に転換したからである。オバマ前政権の対中融和戦略からである。トランプ大統領の「米国第1」は、「中国第1」との米中対決と同義となる。東アジアが戦いの舞台となり、日米同盟基軸強化となる。

問題は、日米同盟基軸強化とは、沖縄県の海兵隊強化と同義となることである。海兵隊の普天間基地の辺野古移設の促進が喫緊の課題となる。そもそも、マティス国防長官は海兵隊出身の初の国防長官である。にもかかわらず「安保見直しの起点に」とは、事実誤認のミスリードなるが。
読売に「シムズ教授インタビュー」「物価上昇まで緊縮財政保留」が載っている。

「米プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授は読売新聞のインタビューで、日本がデフレを脱却するためには、一時的に財政の悪化を招いても、財政支出を拡大させることが必要だとの考えを示した。シムズ教授との主なやり取りは次の通り。

――日本がデフレを脱却できないのはなぜか。

『日本銀行による金融緩和と連携した、適切な財政政策が行われていなかったためだろう。<アベノミクス>は金融緩和と財政出動の協調をもたらすように思えたが、始まって間もなく消費税の増税が行われた。消費税を徐々に引き上げる計画があることも発表した。これは金融緩和と逆方向の効果をもたらしている』

『適切な財政支出の拡大を行う場合は、物価の上昇率が目標に到達するまで、低金利の維持と組み合わせた金融政策が重要になる。しかし、財政政策を変えないなら、低金利を維持しても、それほど効果はないかもしれない』

――金融政策だけでなく、財政支出の拡大が必要と考える理由は。

『私の理論では、財政政策によってインフレやデフレの圧力が決まる。例えば、財政赤字が増えると、国民は<将来、増税が起きる>と考え、消費や投資は慎重になり、デフレ圧力が強まる。日本と欧州、最近の米国では、国民が財政赤字を心配し、退職金や国の健康保険が危機にさらされていると信じている。これではお金を使いたいと感じるはずがない』

『日本では財政支出の拡大が、物価の上昇率目標を実現するためだということがはっきりしていなかったように思える。必要なのは、インフレを起こすという目的を明確にして財政支出を拡大することだ。<いずれ緊縮財政が必要になるが、デフレ脱却までは実行できない>と宣言し、財政の緊縮を保留する。物価の上昇によって税収を増やし、借金を返済すると国民に思わせることができれば、国民は貯蓄よりも投資や消費にお金を回そうとするだろう』

――日本が消費税増税を2019年10月に延期したのは正しい判断だったのか。

『正しい方向に向かっているが、増税の時期を定めたのは正しくない。その時にデフレを脱却できていなかったら、誰も増税は望まない。政府は<物価の上昇率が目標に到達し、その状態が数か月続いたら、増税する>と言うべきだ』

≪激しいインフレ懸念も≫

シムズ教授が提唱する『シムズ理論』は、デフレ圧力が長引く中では、国の借金(国債)を増やしてでも、財政を拡大すべきだとの考え方だ。ただ、財政が際限なく悪化する恐れなど、問題点を指摘する声もある。

シムズ氏の考えは、『物価の水準は財政が決める』というものだ。日本や欧州は、大規模な金融緩和を続けているが、思うように物価は上昇していない。この原因をシムズ氏は中央銀行が行う金融緩和に政府による財政拡大が伴っていないためだ、と主張している。

シムズ氏は、政府が将来の増税を否定した上で財政を拡大させれば、将来の物価上昇を予想する国民が増えると見込んでいる。将来の増税に備えて、足元の消費を手控えることもない。人々が物価が上昇する前にモノやサービスを購入しようとする結果、実際に物価水準が上がるとの期待がある。

国債の返還については、増税や歳出削減ではなく、物価上昇に伴う税収増で賄うべきだとしている。

トランプ米大統領は、減税とインフラ(社会資本)投資という財政拡大策を打ち出している。日本政府内では、シムズ理論も踏まえ、『米国と歩調を合わせ、財政を拡張すべきではないか』(経済官庁幹部)という声も出ている。

安倍首相の経済政策のブレーンで、内閣官房参与の浜田宏一氏は読売新聞のインタビューで、シムズ理論について、『今の日本経済に合った考え方だ』と評価。デフレからの脱却には『金融緩和を続けた上で、財政政策を拡大する必要がある。2019年10月に予定されている消費税率引き上げを延期し、法人税率を引き下げるべきだ』と強調した。

ただ、日本の長期債務は国内総生産(GDP)の2倍程度で、先進国で最悪の水準にある。財政規律に配慮しない政府が発行する国債に買い手が集まるのかを疑問視する見方もある。野村証券の水門善之氏は『野放図な財政拡張につながった場合、制御できない激しいインフレになるリスクを忘れてはいけない』と指摘している」。

シムズ理論の「物価上昇まで緊縮財政保留」は、正論である。日本がデフレ脱却できない理由は、14年からの消費増税にあると指摘し、その解をトランプ政権に倣って財政拡大策をと指摘している。19年10月の消費増税は再延期となる。アベノミクスの正しさを論証している。

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