2015年11月23日 毎日「保守と変革、自民党60年」 曽根泰教・慶応大教授「陳情政治から脱却を」

毎日の「保守と変革、自民党60年」インタビュー㊥に、曽根泰教・慶応大教授が「陳情政治から脱却を」述べている。

――自民党が長期間、政権の座にあったのはなぜでしょうか。

◆東西冷戦を背景に米国と良好な関係を築き、高度経済成長で地方へ利益分配をしてきたことが大きな要因だ。ただ、それは外部環境頼みであり、自民党が優れた政策集団だったことを意味するわけではない。低成長時代に入っても自民党は官僚を使いこなすシステムを作り、集票マシンとなる地元後援会を築き上げてきた。

―一 一方で自民党に対抗してきた社会党は勢力を失いました。

◆1955年の保守合同の前に社会党の右派と左派が統一した。財界も米国も左翼勢力が台頭することを懸念した。しかし、当時、国内最大の炭鉱で起きた三井三池争議(60年)で組合側が敗北した。これ以降は資本家と労働者が激突する構図は終わり、労使協調が主流となった。農村から都市への人口移動などの社会変動が起きたが、不満を持つ人の声を社会党は吸い上げることができなかった。

――政府と自民党の関係も変わり『政高党低』の傾向が顕著になっています。

◆衆院選挙制度が中選挙区から小選挙区に変わったことが大きい。同じ選挙区から複数の候補が当選する中選挙区制は自民党政権の維持を前提にしたシステムだった。自民党の候補らは派閥同士で競争した。一方、選挙区で1人しか当選できない小選挙区制は政権交代を前提にしたシステムだ。競争相手がライバル派閥から野党に変わった。『党内で分裂するのは得策でない』との危機感が首相の下での結束を促すことになった。

――『ポスト安倍』の顔が見えないと言われます。

◆党内の勢力構図的には石破茂氏の顔が浮かぶが、現実味を感じない。しかし、稲田朋美氏や小泉進次郎氏が首相候補になるのは先の話だ。その間をつなぐ人物がピンとこない。将来の首相候補を育てるのは政党の重要な役割だ。首相官邸の力が強いのはやむを得ないが、対抗勢力の異論を認めないという今の自民党の風潮は行き過ぎだ。

――これからも自民党1強の体制は続くのでしょうか。

◆敵失を待つだけの野党の体たらくを見れば、当面は続くだろう。自民党は低成長時代になっても利益分配型の政治を続け巨額の財政赤字を作った。自民党60年の負の遺産だ。皆で痛みを分かち合うような新たなモデルを作らなければならない。支持者の要望を役所につなぐ陳情政治から脱却し、議員主導で政策を立案する政党へと脱皮してほしい」。

ポスト安倍の顔が見えないのは、18年総裁選での石破氏、野田氏が非現実的だからである。2020年まで安倍続投で、そのポスト安倍は小泉氏か稲田氏になるが。

pagetop