2015年5月6日 毎日「オピニオン」「『戦争法案』の発言、自民が反発、騒動に」「国会での発言の自由」

毎日の「オピニオン」に「『戦争法案』の発言、自民が反発、騒動に」「国会での発言の自由」が書かれている。

国会での発言の自由はどこまで認められるのか――。今国会に提出予定の安全保障関連法案を巡り、参院で野党議員が『戦争法案』と呼ぶなどして質問したことに関し、自民党側が『不適切な言辞』と反発、議事録掲載にあたって発言の修正を求める騒ぎがあった。憲法は国会議員に対し、院内の発言について院外で責任を問われない『免責特権』を与えている。自民党側は要求を取り下げたが、騒動は今後も尾を引きそうだ。

<「不適切」と修正求め>
『安倍内閣は14本から18本以上の戦争法案を出すと言われています』。4月1日の参院予算委員会で福島瑞穂氏(社民)が質問した。すると即座に、岸宏一委員長(自民)が『不適切と認められるような言辞があったように思われる』と指摘した。これを受け自民党理事が17日、『戦争関連法案』『戦争につながる法案』への発言修正を求めた。

3月20日の参院予算委でも同様の問題が起きた。小西洋之氏(民主)が安保法制に関する質問で『外務官僚を中心とした狂言的な官僚集団』と発言した。自民党の岡田広理事が「不適切な言辞」をと指摘し、4月に入って別の自民党理事が発言の修正か削除を求めた。

衆参両院の規則はいずれも、委員会での発言について『委員会の秩序をみだし又は議院の品位を傷つけるときは、委員長は発言を取り消させる』としている。

発言の議事録削除は通常、委員会理事の合意を受けて行ったり、委員長が職権で実施したりする。今回はこうした場合と違い、議員本人に自発的な発言の修正を促そうとしたようだ。

福島、小西両氏は発言の修正に応じなかったため、3月20日と4月1日の議事録が確定せずに公開されない状態が続いた。最終的に4月28日になって、岸委員長が両氏の発言を修正せずに公開することを決めた。

岸委員長は取材に『2人の発言はレッテル貼りで、ちょっと常識的でないと思ったが、(議事録に)載せる載せないとか決めつけていない。議員を萎縮させることはないと思う』と説明した。自民党の対応については「(安倍晋三首相の意向の)そんたくはない」と述べた。

<過去にも使用>
1999年、共産党議員が当時審議されていた周辺事態法案について、20回以上『戦争法案』と呼んで質問した。

これに対し小渕恵三首相(当時)は同年3月26日の衆院特別委員会で『従来の共産党のご意見をずっと聞いておりますと、これ(共産党の意見)が戦争法案というような感じがいたしておりまして、むしろ平和確保法案というのがこの法案(周辺事態法案)であることを、はっきり国民の前に申し上げたいと思います』と答弁した。いずれの発言も議事録にはそのまま掲載された。

福島氏は今回の騒動に先立つ今年2月3日の参院予算委で『5月に安全保障法制についての法案、私は戦争法案と言っておりますが、出てくると言われております』と質問している。しかし、この際は発言がそのまま議事録に載った。自民党の要求に対し福島氏は『ここで使うのをやめたら、この言葉が使えなくなる。言葉が奪われかねない』と話した。

一方、小西氏は毎日新聞の取材に『過去の議事録に<狂言的>という言葉があるのを確認した上で質問した。危機的な状況を伝えようとすれば、踏み込んだ言葉を使わざるを得ない』と主張した。さらに『このままでは、多数派が気にくわない言葉にレッテルを貼って、国会での発言を萎縮させることになりかねない。私自身、指摘を受けて悩み、別の委員会での発言が慎重になってしまった時期がある』と明かした。

<失言・暴言で削除>
衆参両院での発言が議事録から削除されたり、修正されたりしたケースは過去にある。失言・暴言が多いが、政治的な立場の異なるテーマについての発言が問題視されたこともあった。

2010年11月、仙谷由人官房長官(当時)が衆院予算委で持参した資料を報道機関のカメラマンに撮影され『盗撮された』と発言したが、問題視されて『撮影』に修正した。

08年2月の衆院予算委では、町村信孝官房長官(同)が『某党の某代表が政党を解散した時、お金がどこかに行ってしまった』と発言した。身内の与党側から『行き過ぎだ』と議事録削除を提案される異例の展開の末、町村氏は『訂正したい』と表明し、発言は削除された。

07年10月の衆院厚生労働委員会では、長妻昭氏(民主)が『与党というものは一度でも(政府の)不祥事を追求したことがあるのか』と与党を批判し、茂木敏充委員長(自民、当時)の職権で議事録から削除されたことがある」。

福島瑞穂氏の4月1日の参院予算委員会での「安倍内閣は14本から18本以上の戦争法案を出すと言われています」発言を、岸宏一委員長(自民)が「不適切」と修正を求めた騒動があったが、岸委員長が正しい。安保関連法案に「戦争法案」とのレッテルを貼ることが「平和と言う名の戦争」そのものだからである。安保関連法案は、「戦争を抑止し、平和を確保する法案」なのに、である。真逆である。

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