2019年10月2日 読売「スキャナー」「サウジ施設攻撃」「思惑交錯中東混沌」

読売の「スキャナー」に「サウジ施設攻撃」「思惑交錯中東混沌」が書かれている。

「サウジアラビアの石油関連施設への攻撃を巡り、サウジと米国は、イランが巡航ミサイルや無人機を投入したとの見方を強めている。だが、証拠は明らかになっておらず、攻撃の狙いも判然としない。関与を否定するイランに対し、サウジは包囲網を強化したい考えだが、米国には紛争を避けたい本音ものぞく。3か国の思惑が中東情勢の行方を混沌とさせている。

<最新型無人機>

米CNNによると、14日の攻撃に使用された巡航ミサイルや無人機は、米国やサウジのレーダー防空網があるペルシャ湾を避け、クウェートやイラク上空を迂回し、サウジ東部アブカイクとクライスの施設に到達した。

イランやイエメンの反政府武装勢力フーシは高度の無人機を所有している。地元メディアなどによると、イランは2011年に米軍の最新型の無人機を捕捉して得た技術を使い『サーエゲ』と呼ばれる無人機の国内生産を始めた。さらに、攻撃型無人機『カラール』  500キロ級の爆弾を積載でき、最長飛行距離は1000キロに及ぶ。今回犯行声明を出したフーシも、同規模の無人機を所有しているとの見方は強い。

<対米強硬派>

イラン外務省は15日、米国の主張を『無意味で理解ができない』と攻撃を否定する声明を出した。仮にイランの関与があったとしても、狙いは不明だ。マクロン仏大統領は、英独とともに、イランの将来の原油輸出収入を担保に150億ドル(約1兆6200億円)の経済支援を提案しており、軍事挑発は、支援停止のリスクをもたらす。

憶測が飛び交うのが、イランの軍事組織『革命防衛隊』など対米強硬派の存在だ。米国とイランは攻撃前まで、9月下旬の国連総会に合わせ、協議を行う可能性が出ていた。こうした融和ムードを歓迎しない勢力が攻撃を主導したとのシナリオだ。サウジを軍事的にけん制したいフーシが、イランの意向を無視して攻撃したとの見方もある。

一方、サウジ国営通信は18日、サウジがホルムズ海峡などの安全確保を目的とする米主導の『海洋安全保障構想』への参加を表明したと伝えた。サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は17日、産油能力が9月末までに攻撃前の水準にほぼ戻るとの見通しを示し、『石油施設の防御を講じた』と言明した。サウジは今後もイランからの攻撃があり得るとして、国際社会に支援を求める狙いとみられる。

<トランプ氏の本音>

『米国は(戦う)準備はできている』。ペンス副大統領は17日の演説でこう宣言した。だが、『大統領が発言しているように、いかなる相手との戦争も望んでいない』とも強調した。トランプ大統領は今回、イランの関与が濃厚との見解を繰り返しながら、強い非難は避けてきた。ホワイトハウス高官は『大統領は攻撃犯の特定に慎重だ』と解説する。

中東で米軍の関与を減らすことはトランプ氏の選挙公約の柱だ。トランプ氏は『イランとの紛争を始めれば、2020年大統領選での再選は絶望的』(共和党関係者)との警鐘を強く意識しているとされる。

サウジは米軍駐留を受け入れている米国の同盟国だが、米国と防衛条約は結んでいない。トランプ氏は16日、記者団から今回の攻撃に絡み、サウジ防衛を約束したか否かを問われ、『約束していない。サウジへの攻撃で、我々への攻撃ではない』と言い切った。

≪日本の原油調達に危うさ、9割中東依存「多様化」には難題≫

日本の原油調達量の約4割を占めるサウジアラビア産石油の輸入見通しが立ったことで、国内供給に与える影響は限定的となりそうだ。18日の東京原油先物市場では、ドバイ原油の2020年2月渡し価格は前日比約5・3%下落し、1キロ・リットルあたり3万9110円だった。ただ、中東情勢は当面不安定な状況が続くとみられ、日本が原油を中東に依存する危うさが改めて浮き彫りになった。

世界の石油生産量のうち、サウジアラビアやイランなど中東諸国は約3割を占め、世界のエネルギー供給は中東情勢に大きく左右される。中でも資源に乏しい日本は原油輸入の9割を依存しており、影響を受けやすい環境にある。

日本は、海外からの輸入が途絶えた場合の当面の備えとして、国内消費量の236日分の石油を備蓄している。これまで、1979年の第2次石油危機や91年の湾岸戦争、2011年の東日本大震災など計5回、備蓄が放出された。資源エネルギー庁幹部は『十分な量の備蓄だ』と話す。

中長期的には調達ルートの多様化が求められる。ただ、中東依存からの脱却は容易ではない。米国はシェールオイルの生産を飛躍的に伸ばし、昨年、世界最大の産油国となったが、日本が米国から輸入する原油の割合は2%超(18年)にとどまる。米国からの原油輸送が中東からに比べて長期間かかることや、石油元売り各社の精油設備が中東産原油に適するよう作られていることが影響しているという。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の萩野零児シニアアナリストは『今回の影響は軽微だったが、中東からの安定供給への構造的な懸念が高まった。米国やロシアなど中東以外からの調達量を思い切って増やす決断が求められる』と指摘している」。

トランプ大統領は対イラン戦争は再選に絶望的との警告を受け入れている。イランの最強硬派イスラム革命防衛隊が、トランプ氏の報復攻撃はないとの前提で、サウジの石油施設のペルシャ湾側の中枢部を巡行ミサイルで限定攻撃したものである。全面戦争にならないように、である。トランプ氏は、最後まで特定犯を絞りこまない意図である。

 

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