2019年1月11日 産経「米中新冷戦 狙いは海洋覇権」

産経に「米中新冷戦 狙いは海洋覇権」が書かれている。

2019年は米ソ冷戦が終結して30年の節目にあたる。1989年、ドイツでは『ベルリンの壁』が崩壊し、中国では天安門事件があった。30年を経て、世界は米国と中国の『新冷戦』とも称される現実を目にしている。日本は海洋覇権を目指す中国の矢面に立たされている。

≪日本が最前線 南シナ海列島線攻防≫

中国の習近平指導部は『海洋強国』を標榜し、拡張主義的な動きを強めている。その主な目的は、海洋権益を拡大して経済発展を持続させ、ひいては国民の不満を解消して共産党の一党独裁体制を存続させることにある。

中国人民解放軍はもともと陸軍主体の軍隊だった。1978年に鄧小平指導部が改革開放を打ち出した後、経済発展で資源輸入や製品輸出に必要なシーレーン(海上交通路)の安全確保が急務となり。海軍の近代化に注力してきた。

海軍の戦略的基礎を築いたのは鄧氏の側近、劉華清・元海軍司令官だ。劉氏は80年代、海軍の作戦半径を2000年までに第1列島線(九州―沖縄―台湾―フィリピン)に拡大し、20年までに小笠原諸島やグアムを結ぶ第2列島線を突破、50年に世界的な制海権を掌握する構想を描いた。

習指導部は第1列島線外の西太平洋での海軍艦隊や空軍部隊による遠洋訓練を常態化させ、世界的な軍事プレゼンス(存在感)拡大のために空母打撃群の整備も急ぐ。21世紀半ばまでに米軍と並ぶ『世界一流の軍隊』を構築する目標を掲げており、こうした動きは劉氏の方針と符合する。

中国が特に重要だと認識しているのは、エネルギー安全保障と周辺海域での資源開発だ。巨大経済圏構想『一帯一路』には、中東やアフリカからの資源輸送路を海と陸で確保する目的がある。将来、米国が中国に対し禁輸措置に踏み切る可能性も念頭に置く。

中国は大陸部に約1万8千キロの海岸線を持ちながら、第1列島線上の米軍基地や自衛隊基地、台湾などによって、外洋への出口を塞がれている。宮古海峡や台湾海峡といった航路を戦略的に重視するのはこのためだ。

中国は、まず第1列島線内の近海から米軍を追い出す『接近阻止・領域拒否』を優先課題としている。

特に南シナ海は、中国が輸入する石油の約8割が通過する海上交通の要衝であり。豊富な天然資源も埋蔵する。水深が深く、戦略原潜が探知されずに西太平洋まで出やすいため、米国に対する核抑止力の拠点でもある。

国際社会の反発を顧みず、強引に人工島の建設と軍事拠点化を進め、米軍排除を狙う背景には、こうした事情がある。

米国は海軍力の増強によって、覇権的行動をとる中国を封じ込める考えだ。トランプ大統領は『2050年代までに海軍の保有艦艇を355議席に増やす』とし、関連法も成立させた。米専門家には中国海軍が30年までに415隻体制を確立するとの分析もあり、国防総省は中国に海軍力で差をつけられないことを急務の一つと位置付ける。その上で、米艦船を西太平洋に前方展開して南・東シナ海でのプレゼンスを向上させ、米海軍が太平洋やインド洋、南シナ海などで柔軟に作戦行動を行えるようにするのが戦略目標だ。

米ハドソン研究所のブライアン・マクグラス研究員は、南シナ海で米軍が取るべき措置について、恒常的な『航行の自由作戦』に加え、全ての中国艦船を追跡・監視し、いつでも標的に捉えられる『先進情報収集システム』を構築すべきだと提言する。

マクグラス氏はまた、現在は米西海岸サンディエゴに司令部を置く第3艦隊をグアムまたはオーストラリアに前方展開すべきだとも指摘した。米国は、中国が潜水艦や空母戦力を増強させたとしても南・東シナ海から太平洋やインド洋に出る際に通過する海峡を押さえる。それが戦略的に重要となる。

東シナ海に関しては、ペンス副大統領が昨年10月の対中政策演説で『尖閣諸島は日本の施政権下にある』と明言。日米安全保障条約が適用されるとの立場を明確に打ち出した。米国はその上で、日本が自国の領土で防衛に向けて主体的役割を担うことを期待している。米専門家らがもう一つ強調していることがある。仮に中国が南・東シナ海で米国などと武力衝突した場合、『壊滅的打撃』を受けるのは中国であることを明確に警告することの重要性だ」。

「中国は大陸部に約1万8千キロの海岸線を持ちながら,第1列島線上の九州、沖縄の米軍基地や自衛隊基地、台湾によって外洋への出口を塞がれている」。

第1列島線上の沖縄制圧が中国の喫緊の課題となる。翁長県政・玉城県政は、中国共産党主導の間接侵略の成果となるが。辺野古移設反対運動がそれである。

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