2017年11月15日 日経「いざなぎ超え不安交じり」「景気回復 戦後2位58カ月」「稼ぎ、輸出から投資へ」「国内に還流しづらく」

日経に「いざなぎ超え不安交じり」「景気回復 戦後2位58カ月」「稼ぎ、輸出から投資へ」「国内に還流しづらく」が書かれている。

「2012年12月に始まった景気回復局面が高度成長期の『いざなぎ景気』を超えて戦後2番目の長さとなったことが8日、確定した。内閣府が同日発表した9月の景気動向指数(CI、2010年=100)の基調判断を11カ月連続で据え置き、景気回復が9月で58カ月間に達した。海外需要の追い風などで歴史的な安定回復軌道を歩む日本経済だが、将来の成長期待は低く、不安も入り交じる。

景気回復の期間などは、後日開く景気動向指数研究会で専門家らの意見を聞いて内閣府が判断する。茂木敏充経済財政・再生相は現在の景気は『いざなぎ景気を超えた可能性がある』との認識を示しており、今回の景気動向指数の判断から具体的なデータとしても確認された。

いざなぎ景気は1965年11月から70年7月まで57カ月間続いた。今の景気回復が2019年1月まで続けば、02年2月から73カ月間続いた戦後最長の景気回復を抜く。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは『どの国でも好景気が雇用者所得の増加や消費の活性化につながっていない。その分、景気が過熱せず、結果として緩やかな拡大が続いている』と指摘する。

米景気の回復は09年7月からすでに8年超だ。ドイツも9年近くに達し戦後最長を更新中。英国は7年超、フランスは約5年という安定ぶりだ。

日銀の異次元緩和による円安も景気を下支えし、製造業では生産を国内に戻す動きも出ている。17年の製造業の雇用者数は7年ぶりに1千万人の大台を回復する見通し。景気回復に人口減少が加わり、企業の人手不足感が強まっているのも今の景気回復の特徴だ。

ただ成長の実感となると心もとない。1人あたりの名目賃金は今の回復局面で1・6%増えただけだ。個人消費も14年の消費増税後に落ち込むなど力強さに欠けており、物価変動の影響を加味した実質でみて3%の増加にとどまる。5割増えた『いざなぎ景気』はもちろん、7%増えた02~08年の戦後最長の回復局面にも見劣りする。

景気指標の割に恩恵を感じられない要因の一つとして、日本経済の稼ぎ方の変化がある。伝統的に日本の景気をけん引してきた輸出は今の景気回復期で26%伸びた。83%増えた戦後最長の回復期と比べるとテンポが緩慢なのは明らかだ。

自動車や機械など競争力のある輸出産業が付加価値の高い製品にシフトしているため、海外需要が増えても輸出数量が伸びにくい面がある。

輸出の代わりに伸びているのが、海外企業の買収や外債投資から得られる配当金や利子だ。財務省によると海外からの配当金など『第1次所得収支』の黒字は、12年12月から直近17年8月までの累計で91兆907億円。戦後最長の回復期に稼いだ黒字(71兆7069億円)を27%上回る。

ただしこうしたお金がすべて国内に還流するわけではない。日本企業が12年12月以降、海外でのM&A(合併・買収)など直接投資で稼いだ配当金のうち、46%は現地法人の内部留保に留め置かれた。市場拡大の余地が大きい新興国などで工場建設など再投資に回すためだ。

日本経済の成長期待も下がっている。内閣府の調査によると、上場企業が17年1月時点で予測した今後5年間の日本の実質経済成長率は年1・0%。景気回復初期の14年1月の1・5%より低下し、過去最低に並んだ。

日本経済の実力を示す潜在成長率が1%程度と、低空飛行から抜け出せないためだ。新たなIT(情報技術)サービスの普及などデジタル経済化が急速に進めば、設備投資による資本蓄積の必要性が薄まり潜在成長率を押し上げる力も弱まる。

硬直的な労働市場の見直しなど構造改革で一人ひとりの稼ぐ力を高めたりしないと企業の慎重姿勢は変わらず、高収益でも賃金が増えないという状況が続きかねない。

今の景気回復が19年1月まで続けば、戦後最長の記録を更新する。民間エコノミストに回復の持続力を聞いたところ『19年半ばまでは回復が続く』との見方が多い。最大のリスクは米国の成長息切れだ。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は『トランプ政権の大幅減税が米景気を過熱させ、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めのペースを速めることが、景気後退につながる』とみる。

国内では20年の東京五輪需要の一巡が景気の下押し要因になりかねない。JPモルガン証券の鵜飼博史チーフエコノミストは『競技場建設やホテル改修が18年にピークを迎え、19年には減り始める』と予測。19年10月には消費税率の10%への引き上げも予定されており『19年問題』が景気回復に水を差す可能性がある」。

2012年12月に始まった景気回復局面が高度成長期の『いざなぎ景気』を超えて戦後2番目の長さとなった。アベノミクス効果である。問題は、景気回復の実感が伴ってないことである。GDPの約6割を占める個人消費の低迷である。14年の消費増税故である。来年の賃上げ3%がなるか否か、である。

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