2017年6月5日 日経「内向く世界、G7の試練」㊤ 「『米国第一』自由経済を翻弄」

日経の「内向く世界、G7の試練」㊤に「『米国第一』自由経済を翻弄」が書かれている。

「トランプ米政権の発足後、初めての主要国首脳会議(タオルミナ・サミット)が27日まで開かれた。米国が自国優先主義に傾き、主要7カ国(G7)はその精神といえる自由貿易体制の堅持を巡って大きく揺れた。トランプ政権は中国などとの新しい「G」の枠組みさえ探り始めている。世界の協調が乱れ、秩序の空白が広がりかねない。

サミット初参加のトランプ氏。26日の討議では『公正で自由で互恵的な貿易が重要だ』と穏やかに話始めたが、各国の主張を10分ほど聞くと『<互恵的な貿易>とは、あなた方が30%の関税を課すなら、我々も関税を30%にするということだ』と突然まくしたてた。

<規範無視の発言>

『大統領は<俺の意味することを各国が全く理解していない>と思ったようだ』。同席したコーン米国家経済会議(NEC)委員長は漏らす。米国が特定の国に30%もの報復関税を課せば世界貿易機関(WTO)協定違反。国際ルールを度外視する発言が飛び出すほど、今回のサミットは変質した。

G7首脳は27日採択した首脳宣言に『保護主義と闘う』と記したが、この一言を入れるかどうかで最後までもめた。貿易赤字を損失ととらえるトランプ氏が『公正な貿易』を訴えたためだ。市場の安心を誘う『協調』を演出してきたG7が、その神髄である反保護主義を巡り、結束のもろさを隠しきれなくなった。

1975年、石油危機や変動相場制移行など経済の混乱を受け、サミットはフランス・ランブイエで始まった。冷戦とその終結、経済のグローバル化。ロシアを一時加えるなど枠組みを変えつつも、第1回会合で『開放された貿易体制』と『世界全体の繁栄』をめざすと宣言し、それが自国の発展と平和を支えるとの価値観を共有してきた。約40年にわたり『一国主義』を自制してきた歴史を『米国第一』のトランプ氏が激しく揺さぶる。

<米が体制見直し>

英国は欧州連合(EU)離脱を決め、議長国イタリアや大統領選直後の仏も高い失業率に苦しむ。大衆受けしやすい保護主義は世界経済のリスクだ。国際通貨基金(IMF)は2017年の世界経済を3・5%成長と見込むが、貿易の伸びは16年に2・2%に鈍った。米国は4月、カナダ産木材を不当廉売と断じ、相殺関税を課す仮決定を下した。カナダも報復措置を検討し、G7内で早くも貿易摩擦が広がる。

『中国とロシアが入らないG7が生産的か、トランプ氏は見極める』。米ホワイトハウス高官はサミット直前、G7体制の見直しに言及した。北朝鮮問題で中国と、過激派組織「イスラム国」(IS)対策でロシアとの連携を探るトランプ氏は『7+α』を視野に入れる。G7の理念より、経済と安全保障をはかりにかけて『米国第一』を押し通すトランプ氏の姿勢が色濃くにじむ。

08年の金融危機後、世界は協調の枠組みを中ロなど新興国を交えた20カ国・地域(G20)に求めた。『保護主義の拒否』という理念も引き継がれたが、先進国と新興国の綱引きで貿易・投資や通貨政策で連携する理想とはほど遠い。G7の結束も揺らぎ、軸がぶれる世界は『次の危機』にどう立ち向かうのか。濃い不確実性が広がっている」。

トランプ氏の「G7+α」戦略とは、G7+ロシアによる対中国・北朝鮮包囲戦略である。安倍政権の日米同盟基軸の対中・北朝鮮強硬、対ロ融和戦略と一致するが。

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