2015年12月20日 産経「八重山日報・仲新城誠編集長インタビュー」「沖縄2紙は権威そのもの」「サイレントマジョリティは確実に存在する」

産経に「八重山日報・仲新城誠編集長インタビュー」「沖縄2紙は権威そのもの」「サイレントマジョリティは確実に存在する」が載っている。

「石垣島を拠点とする日刊紙、八重山日報の編集長を務めています。部数は6千部と、琉球新報、沖縄タイムスの沖縄県の2大紙とは比べるべくもありませんが、2紙では報じられない八重山の実情の報道に努めています。

<「虚構の姿」を流布>

沖縄では、この2大紙のシェアが圧倒的です。本土であれば産経、読売、朝日、毎日とさまざまな新聞があり、読者にとっては、自分の考えを論理的に裏付け、活字で表現してくれる多様な選択肢がある。しかし、沖縄には2紙が唱える『反米軍基地』『反自衛隊』という1つの論調しか存在しません。

選択肢が存在しないため、県民はその論調が正しいと信じ込まされている。2大紙は翁長雄志知事とタッグを組み、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する運動の事実上の『核』になっています。反権威のようで、実は『権威』そのものなのです。

本土でも、2大紙が発信する『県民は基地のない島を望んでいるのに、日米両政府に弾圧されている』という『虚構の沖縄』の姿が流布されているように思います。

先日、東京で武蔵野市議会を取材しました。市議会が9月に辺野古移設に反対する意見書を可決したことに対し、沖縄県民たちから意見書の取り下げを求める請願が提出され、その審査があったのです。

しかし、請願の採択に反対する市議の意見を聴いていると、『やはり、通り一遍の沖縄への理解しかないのか』と感じずにはいられませんでした。『基地の島で不条理な圧力に苦しんでいる沖縄』という、一種の被害者史観です。中国の脅威にさらされる尖閣諸島(沖縄県石垣市)についても、ほとんど質問がなかったのは残念でした。

<国境の危機報じず>

尖閣を抱える石垣、八重山の住民には『自分たちが国防の最前線に立っている』という危機感があります。中国公船の領海侵入が常態化し、漁業者が追跡されたり、威嚇されたりすることも日常茶飯事。八重山日報では毎日、中国公船の動向を1面に掲載しています。

しかし、2大紙はそうした国境の島の危機感をほとんど報じてくれません。それどころか、漁船が中国公戦を挑発していると言わんばかりの記事や、中国が唱える『尖閣棚上げ論』に同調するような社説が掲載されている。中国の国営放送とそっくりです。

翁長知事は9月にジュネーブで開かれた国連人権理事会で演説し、『沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている』と訴えました。自己決定権という言葉は、反基地活動家が『沖縄独立』の文脈で使う言葉です。県民の安全に責任を持つ知事であるにもかかわらず、中国に対して尖閣周辺での挑発をやめるよう訴えることもしませんでした。

そして演説直前に開かれたシンポジウムでは、琉球新報の編集局長がパネリストとして、翁長知事と並んで辺野古移設反対を訴えていました。取材中だった沖縄タイムスの記者もスピーチを始めました。これでは記者なのか、反基地活動家なのか分かりません。

<転機は尖閣問題>

私自身、以前はそうした2大紙に疑問を感じつつ、積極的に声を上げることはなかった。『そう感じる自分がおかしいのだ』と思い込まされていたのです。

転機はやはり、尖閣問題でした。現実に遭遇したことで、反基地、反自衛隊を唱える2大紙の主張は何ら処方箋にならないと分かったからです。私と同じような疑問を持つ県民は少なからず存在します。文字通りのサイレントマジョリティー(静かな多数派)です。

石垣市もかつては『革新の牙城』といわれてきた土地柄でしたが、この10年で大きく転換しました。保守系市長の誕生が一つの契機となり、柔軟な考えの若手市議が続々と誕生し、状況は雪崩のように変化しました。

サイレントマジョリティーは確実に存在し、石垣では声を上げ始めている。かつて『革新の闘士』だった人ですら『自衛隊配備も仕方ない』と話すようになりました。一つのきっかけで変わる。沖縄本島でも同じように声が上がり始めれば、状況は劇的に変わる可能性があります。

まずは、沖縄県民が毎日読まされている新聞の欺瞞性に気づくことが重要です。私自身も記者なので、記事の裏に込められている情報操作、県民を特定の方向に誘導しようとする意図が分かる。そういう隠された意図に気付いてほしいと思い、自分なりに情報発信に努めているところです」。

「まずは、沖縄県民が毎日読まされている新聞の欺瞞性の気付くことが重要です」は、正論である。県民に確実に存在するサイレントマジョリティが声を上げる転機となるからである。問題は、その転機を与える新聞が、沖縄本島にないことである。

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