2015年7月18日 朝日「首相突進、異論に背向け」「ヤジ・威圧・・強行の伏線」「側近『成立すれば国民は忘れる」「安全保障法制」

朝日に「首相突進、異論に背向け」「ヤジ・威圧・・強行の伏線」「側近『成立すれば国民は忘れる」「安全保障法制」が書かれている。

「国民の理解が進んでいないのも事実――。安倍晋三首相自らがこう認めたのに、自民、公明両党は15日、安全保障関連法案の採決を強行した。報道機関の世論調査で多くの国民が反対の考えを示し、憲法学者の多数が憲法違反だと指摘する中、安倍政権は異論や違憲という指摘に背を向けたまま、安保政策の大転換に突き進もうとしている。

『アベ政治を許さない』『自民党 感じ悪いよね』民主党議員が掲げたプラカードが揺れ、採決中止を求める怒号が飛び交う中、衆院特別委員会の浜田靖一委員長(自民)は『採決に移ります』と叫んだ。

野党議員が委員長席に詰め寄り、浜田氏から議事進行用の紙を取り上げると、浜田氏はポケットから別のコピーを取り出して読み上げる。野党議員からは『反対、反対』のコール。委員会室は混乱した。

採決前の質疑で、首相は『まだ国民のみなさまのご理解が進んでいないのも事実だ』とも認めた。浜田氏は採決後、記者団に『もう少しわかりやすくするためにも、法案を10本束ねたのはいかがなものかなと思う』と首相への不満を漏らした。石破茂地方創生相も14日の記者会見で『<国民の理解が進んできた>と言い切る自信があまりない』。政権内には、国民の理解が一向に進んでいないという自覚はあった。それなのに、政権はこれ以上の異論を封じるかのように採決に突き進んだ。

民主の岡田克也代表は採決後、『国民の反対が強まってくるなかで、早く店じまいしなければ大変なことになる。これが首相の考えだ』。共産党の志位和夫委員長も『国民多数の反対を踏みにじって採決を強行した。国民主権の蹂躙だ』とそれぞれ批判。参院で廃案に追い込む考えを示した。

首相がここまでして特別委での採決に踏みきったのは、安保関連法案成立を4月の訪米で米国に公約しており、先送りが国内外で政権の求心力を落とすことになるからだ。このため、衆院を通過した法案が仮に参院で議決されなくても、60日たてば衆院で再議決できる『60日ルール』の適用を視野に、9月27日の会期末から逆算。余裕を持って15日の採決に踏み切った。

新国立競技場の建設問題や九州電力川内原発などの再稼働。戦後70年談話など難題も山積しており、懸案を早期に処理しておく必要性にも迫られていた。

<党内議論も乏しく>
異論封じへの伏線はあった。5月28日の特別委で、首相が自席から民主党議員に『早く質問しろよ』とヤジを飛ばした。政府の説明責任を放棄するような姿勢に批判が集まった。また、6月25日の首相に近い自民党議員の勉強会で、議員が『マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番』『沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていく』などと述べ、政府に批判的な報道や世論を威圧する発言も飛び出した。

自民幹部の一人は法案の作成過程も問題視する。議員が幅広く法案の作成過程に関与することなく、『一部の幹部だけで法案が作られ、党内議論で意見しようとすれば、作成を主導     高村正彦副総裁に論破された』。異論に耳を傾けぬ党内の空気が醸成された。首相に近い参院議員の一人は『消費税や年金と違い、国民生活にすぐに直接の影響がない。法案が成立すれば国民は忘れる』と言い切る。       

くしくもこの日は、首相の尊敬する祖父、岸信介首相が1960年、日米安保条約改定を巡る国会の混乱から退陣した日だ。首相は特別委で『あの(安保改定の)時も国民の理解は    なかなか進まなかった。しかし、その後の実績をみて多くの国民から理解や支持をいただいた』。

かつて、有事法制や消費税率の5%から8%への引き上げ法案では、与野党が粘り強く協議し合意を作り上げた実績もある。だが、今の首相にあるのは、異論もいずれは収まるだろうという楽観論だ。野党議員が委員長席周辺で抗議の声をあげる中、首相は採決の結果を見届けないまま議場を後にした。

<「違憲」指摘最後まで釈明>
法案の内容をめぐり、与野党が厳しく対立する構図はふつうだ。だが安保関連法案は合憲か、違憲かという根幹が問われ続ける異例の審議をたどった。  

『自分の思い通りに憲法をねじ曲げようとしている』。15日の特別委で民主党の辻元清美氏は、長年の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を認めた首相の手法を厳しくせめた。  

こうした批判に、安倍首相は『合憲である絶対的な自信を持っている』と述べるなど、最後まで憲法をめぐる説明に追われた。

首相にすれば、ここまで国会で合憲か違憲かが問われるのは想定外だった。昨年7月の憲法解釈変更後、首相は自国防衛に限定した集団的自衛権なら憲法上認められると説明。弁護士出身の自民党の高村氏、公明党の北側一雄副代表を中心に、内閣法制局を加えて理屈を練り上げた。政権は万全の理論武装をして法案審議に臨んだはずだった。

ところが、6月4日の衆院憲法審査会で憲法学者3人が『憲法違反』と指摘すると、政権は一転、釈明に追われるようになった。

自民は『憲法解釈の最高権威は最高裁だ。憲法学者でも内閣法制局でもない』(稲田朋美政調会長)などと防戦したが、朝日新聞が11、12日に実施した全国世論調査では、法案が憲法に『違反している』が48%に上り、『違反していない』は24%にとどまった。

反論が一向に理解されない中、首相は日本を取り巻く安全保障環境の変化による『リスク』を訴えて、集団的自衛権行使の正当性を主張してきた。しかし憲法によって政治権力を縛る立憲主義に反することを認めれば、時の権力の暴走を許すことにつながりかねず、国のあり方にとって、逆に重大なリスクになる。

『総理は<政治家が判断しなければならない>と言うが独善だ。立憲主義は総理のような独走を抑えるためにある』。民主の大串博志氏は15日の質疑でこう迫ると、首相は『違憲立法かの最終的判断は最高裁判所が行う。憲法にも書いてある』と持論を強調した」。

安保法案が衆院を通過して、60日ルールの適用から成立が確実になった7月16日は、くしくも55年前、1960年、安倍首相の祖父岸信介元首相が安保改定を巡る混乱から退陣した日である。

安倍首相は特別委で「あの安保改定の時も国民の理解はなかなか進まなかった。しかし、その後の実績をみて多くの国民から理解や支持をいただいた」と発言したが、国民への理解が進まないのは、60年安保と同じく、朝日を中心とするメディアと、共産党・民主党(旧社会党)を中心とする野党主導の「平和という名の戦争」によって、国民が「安保法案は戦争法案、違憲だ」と洗脳されたからだ、と見切った発言である。

問題は、安保法案の成立は確実となったが、9月末の成立まで「平和という名の戦争」の大攻勢は続くのだから、内閣支持率、自民党支持率低下は避けられない。内閣支持率40%台、自民党支持率35%前後を維持するために、自民党支持層の思想武装が必須となるが。

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